羽織の男 ページ2
「な…」
怯んだ男の目線を見ると、羽織の男から立派な刀剣が出され、刃物はそこで止められていた。
ガチガチと音がかち合っている。
(何なのこの人…)
帯刀しているなんて気づかなかった…
「お前…なんなんだよ…何でそんなもの…っ」
「それはこちらのセリフだな。君こそ何故刃物を持っているんだ?」
空を切り裂く声に更に怯む男。
「ま…れ…黙れ…黙れ黙れ黙れ……!!!」
怒りに任せて剣を振り上げた男、(危ない!)今度こそ目をつぶったその瞬間、弾かれたように開いてしまった瞳に、すり抜けて銅に入った剣の柄が男を気絶させた姿が映る。
「う゛っぅ…」
「御用だ!この男を警察に連れてゆけ」
いつの間にか走ってきた男の部下のような人達が、返事をして男を連れてゆく。
「…どうだ、足取りは掴めたか?」
「いいえ…この近くには居るようなのですが…」
「あの、」
私の声がそれを遮った。
羽織の男がこちらを向く。
「…ありがとう」
私の心からの声に、羽織の男はニッと笑った。
「いやいや!お役に立てて何よりです!近頃は物騒なので、お気をつけ下さい!」
ハキハキとした物言いに驚いて笑ってしまう。
「ふふふごめんなさい…あんまり元気が良いものだから…でも本当にありがとう…なにかお礼をしたいのだけど…」
近ずいて何をお礼したものかと唸る。
「礼には及びません!しかし女性がこんな夜道を歩くなんて危ないですよ!」
「…そうね…慢心していたわ…いつもはこんなに遅くはないのだけど…」
「特に今は切り裂き魔が…」
男が言いかけた時ゾワッとした何かが走ったように羽織の男が血相を変えた。
すると振り返った先にカマイタチのように何かが笑いながらこちらへ突進ししてきたのがほんの少しだけ見える。
「っ!」
羽織の男は咄嗟に私を覆うように庇って剣を振るった。
「っ…!」
しかし舞う鮮血、私の腕から血が吹き出す。
そして一瞬のパニック。
「鬼か!」
「鬼が出たぞ!追え!」
部下たちが叫ぶ声が聞こえる。
「っう…」
痛みが遅れてやってくる。
「不味い!女性が腕を切った!救護班!」
そのすぐ後に悲鳴。
「っ!」
「…大丈夫よ…私は平気…だから行って…」
羽織の男の焦りと鬼と呼ばれた何かを追うような気持ちを察したのに男は驚いたようだった。
「早く行って!私のように…人を助けて…ね?」
痛みながらも笑ってみせると男は決心し頷いて走ってゆく。
「彼女を頼む!」
痛みの中で、私は彼の背中を見送った。
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:フェンタニル | 作成日時:2021年10月16日 20時