878話 ページ32
『……とはいえあの子も強いから。大丈夫だよ』
「知ってるよ」
待たせているのは自分たちだが、それは自信を持って言える。彼女は、ユキは強くて真っ直ぐだ。
遥弥にとってはいけ好かない存在だが、ティナに託したのだから心配はないだろう。……シモンでなくチャイニーズマフィアまで絡んできているかもしれないこの状況の中、彼女ほど頼りになる存在はない。
『でも、いつまでもそんなに
「言われなくても____」
わかっている、と。……遥弥が液晶に向かってそう答えようとしたその時。
火を囲んで休んでいたはずの10代目と獄寺が、起き上がっていることに気がついた。
「遥弥さん!」
「……ちょっと君たち、何時だと思ってるの? もしかして明日戦うかもしれない自覚がないのかい」
今回の戦い、メインの戦闘員ではない(ことになっている)自分には寝ろと言っておいて、実際にシモンと戦う幹部候補が休息を取らないとは何事だ。
しかし、さらに苦言を呈さんと、遥弥が目を剣呑に細めて口を開く前に、10代目が口早に叫んだ。
「ランボが野ウサギ追ってどっか行っちゃったんです!」
「……はあ? 野ウサギ? 何言ってんの君。ルイス・キャロルじゃないんだから」
「ほ、本当です! 一緒に追っかけてください、あいつどんどん行っちゃって、だから遥弥さんもっ」
『ぶふっ』
「何がおかしいんですか師匠」
液晶の中でティナが吹き出したので睨みつけると、アリスの格好をした遥弥を思い浮かべてしまったのだと答える。……殴り飛ばしたいが生憎今の彼女には仮の実体すらない。
舌打ちして顔を上げれば、既に10代目と獄寺は駆け出していた。……この夜中に、あの調子のまま突っ走っていけばどんなことが起こるかわかったものでなない。
『なんでもいいから早く追ってあげなよ、遥弥くん。ランボくんがいなくなった理由はわかるでしょ?』
「野ウサギはシモンの手か」
『それもあるけど、それだけじゃないよ。
……この誘いはもしかしたら、シモンの手をさらに利用した遥弥くんたちへの挑発かもしれない。ね?』
ならば乗る他ないだろう、と。
始まりの雪はそう言って微笑んだ。
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作者名:夜野兎×さにー☆彡 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年10月1日 7時