870話 ページ24
「ユキの、ため____」
「どわぁぁぁ!!」
ふと顔を上げると、雄叫びと共に紅葉が了平を殴り飛ばし、そして有刺鉄線に叩きつけていた。
了平は呻き声とも悲鳴ともつかぬ絶叫を上げ、空を仰いだ。と、同時にVGに黄色の炎が灯る。
6割もダメージが、と10代目が顔を青くさせる。……最早この時点で了平は満身創痍、確かにこれ以上やれば命に関わるかもしれないな、と遥弥は改めて自分の眼鏡を掛け直す。
だが。
「どうだ了平! これが僕の、シモンの拳闘!! 生きるための拳闘だ!!
とっとと諦めてヒザをつけ!!」
「……紅葉、何をそんなに焦っている? やっと楽しくなってきたところではないか」
有刺鉄線によりかかっていた了平が、それを頼りに自分がヒザを付いてしまうのを防ぐ。それは執念じみた意志の力と覚悟の力だった。
諦めない了平を見て苦い顔をした紅葉に、更に彼は薄い笑みをたたえて「のんびり12R戦おうか」と誘いをかける。
挑発だ、と遥弥は目を細めた。……了平は紅葉を動揺させ、隙が出来る機会を待っている。
(気づいたんだね笹川。彼の目の弱点に)
最初からずっと使えるならば、目は使っておくべきだった。そうなればVGを手にしたばかりの了平には彼に歯が立たなかったはず。紅葉はダメージを負うことすらなかったかもしれない。
……それをわかっていながら、彼が自分の目を使わなかった理由は。
「サンシャインアッパー!!」
下から上へと振り抜かれた拳が、黄色の炎を纏い紅葉の顎を打ち抜いた。
「多量の情報が脳内に流れ込んでくることによるオーバーヒート……。情報処理能力が追いつかなければ当然こうなるだろうね」
「さすが遥弥だな。最初から気づいてやがったか」
「……とはいえ」
それを聞いて、やった、と顔を輝かせた10代目と獄寺に、遥弥は首を振って了平の勝利を否定してみせる。
早計だ、と。
「……いや、まだだよ」
____そう。
弾き飛ばされた紅葉はヒザをついていなかった。
「リミットがあるのは笹川だって同じだ。
肉体のリミットと時間のリミット、どちらが先に来るかの勝負だね」
それでもどちらもヒザをつかないのは、
それほどまでにどちらにとっても、これは負けられない戦いだということなのだろう。
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作者名:夜野兎×さにー☆彡 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年10月1日 7時