第一章 月は満ち欠けを繰り返し、光の色へと染まりゆく

標的40　「かけっこしに行く」 ページ42

「で、なにやってるの？」

やっとの事で俺の頭は解放された。
イテテテ……大丈夫か俺の毛根。

『そっちこそ、なにやってんだよ』
「見に来るって言ったけど？」
『………確かに』
「えっと……Aちゃんはなんでそんなに普通に喋れてるの？」

恭弥と顔を見合わせて、二人で同時に首を傾げる。
はて、何を言ってるのやら。

「普通に喋らないでどうやって喋るの？」
『ごもっとも』
「いやそうじゃなくて……まぁいいです」
「で、Aはなんで群れてるの？」

急に話を振られたのでビクッと肩を跳ねさせる。
若干、恭弥の声に怒気が混ざってるのも怖いですね。

『かけっこでもしようかと……そういう訳でして』
「ふーん」

俺らをじぃっと見まわす彼。
いやいや、なんですか？何を言われるかすごく怖いんですけど。
俺らが固まっていると、恭弥はニヤリと笑った。怖えええええ！！

「いいよ」
「「「『へ？』」」」
「僕もかけっこに入ってあげる」

その言葉に全員フリーズ。
一番最初に脳が再起動したのは俺でした。

『いやいやいや、誰も望んでませんから！！へぶしっ！！』
「なに？」
『すみませんでした』

叩かれた。頭をグーで叩かれた。
涙目で謝るしかないですよね。そしてそれを見て笑ってた山本君！！後で絶対殴ってやる！！勿論二回だ！！！




「ねぇAちゃん、これホントにやるの？」
『仕方ねぇだろ、横の馬鹿がやる気なんだから』
「何か言った？」
『いえ、なんでもないっす』
「でも獄寺君もいいとこ見せようとやる気なんだよね……」
「なんですか十代目！！？」
「なっ、なんでもないよ！！」

お互い大変だな…とツナとため息。
俺ら以外の三人はイキイキしてるから、たまったもんじゃない。
しかも山本のアンポンタンが余計なことを言い出した。

「ただかけっこってのもつまらなくないか？」
「山本！？」
「ワオ、たまにはいいこと言うね」
「よし！一等賞のやつは誰かに一つ命令できるってのはどうだ！？」
「『ちょ』」
「たまにはいい事言うじゃねェか野球バカ！オレが勝ったら、お前はオレが右腕だと認めろよ」
「はは、じゃぁオレと獄寺は一位になったほうが右腕ってことなのな！！」

なんか勝手に言ってるよー！と叫ぶツナ。
そんな事より俺の危機。横の恭弥が俺をガン見してる。

『な……なんでしょう』
「僕が一位になったら、四時間目は僕の手伝いね」
『嫌あああ！！』

そんなことになっては、昼休みにボッチでシャトルランになってしまう！！

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