八百六十九話目 「見せつけるように」 ページ24
毛先だけが赤い髪を靡かせながら彼女が剣を振り上げた。
観客席が湧く。じくじくと痛む足。そっと彼女を見上げれば能面のような表情。だけど、赤い目だけがキラキラと輝いている。
綺麗だと、そう思った。
『ごめんな』
「………」
何とも言えない声色の謝罪が降ってきて、静かに目を閉じる。
ああ、私はここで終わってしまうのか。
兵隊さん………。
『俺たち、任務があるから死ぬわけにはいかねえんだ』
「えっ？」
観客のどよめきと彼女の意味不明な言葉に目を開ければ困ったように弧を描く瞳と、その彼女の後ろから彼女の身体を羽交い締めに……いや、どちらかというと抱きしめている男。
先ほどまでぶら下がっている状態を維持しているのがやっとのような状態だったはずだ。
『じゃ、付き合わせちまって悪かった。元気でな』
観客には聞こえていないだろう声でそう言った彼女はニッと笑うと背後の男に視線を向けた。男の重心が後ろに倒れる。二人が倒れていくその先は勿論…………。
『普通に足首引っ張るだけでよくなかったですか？』
「俺の勝手だ……それに正面見てみろ」
『あ、害悪桃色鳥』
「丁度いいだろう？」
『うっしゃルッチさん、見せつけたりましょう』
「ハッ、いい趣味だな」
倒れていく中で抱きしめられている彼女は、自分の左脇の下から肩を握っている男の手に自分の指を絡めた。そしてもう片手は中指を天に向けている。後ろの男も右手で同じ形を象って不敵に笑う。二人の視線は私の背後に向いていた。
そしてステージから見えなくなる瞬間。
「おい」
『ん？……んぅ！？』
呼ばれて首を向けた彼女の唇に男が噛みついた。
数秒後、大きな水しぶきと観客の声が響き渡る。
ほんの数秒の出来事とやり取りに、一体何人の人間が気づいたのだろう。
私と、彼女たちが中指を立てた相手は確実に気づいている。
なんにせよ………。
「生き残れたんだ……私」
勝者として私の名前を叫ぶ実況の声が、茫然と座り込んだままの私の耳にようやく聞こえてきた。
「ゲホッ！ガハッ！！………ハァ、ハァ、ハァ……殺す気かバカヤロウ！！」
『何言ってんですか！！そんなのルッチさんがき、き、き……！！』
急に想定外の事をされて俺が水中に落下してからも暫くショートしていた為、闘魚に襲われ、結果的にルッチさんを水から引き上げるのが遅れた。
遅れたのは本当に申し訳ないが、遅れることになった原因はルッチさんである。俺ぜぇぇっったい悪くない。
八百七十話目 「もってけドロボー」→←八百六十八話目 「崖にぶら下がっていたら？」
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涙腺崩壊日本人 - 2章まってます！！！！！ (2022年9月9日 21時) (
レス) @page50 id: 66bf482254 (このIDを非表示/違反報告)
涙腺崩壊日本人 - ルッチさんの為なら、いや、更新のためなら天に召されても良い、、、、 (2022年8月18日 0時) (レス) id: 66bf482254 (このIDを非表示/違反報告)
涙腺崩壊日本人 - ルッチさん好き過ぎる作戦隊長さん、ありがとう感謝します私は貴方のおかげでルッチさんに目覚めることが出来ました！ワンピが帰ってくるのを待つぜ！更新お願いします！！超超超超超超超超超大好きです！ (2022年8月18日 0時) (レス) id: 66bf482254 (このIDを非表示/違反報告)
ルッチさぁぁぁん - ホントわかる、、ルッチさん好き (2022年5月11日 23時) (レス) @page44 id: 66bf482254 (このIDを非表示/違反報告)
狐竜(プロフ) - ぴゃ！！！？？（大混乱）やった久々の更新！！！ほんともうこのシリーズのルッチさん大好きなんですよ私……嬉しい…！！！ (2022年3月28日 21時) (レス) @page46 id: 2674e8aa46 (このIDを非表示/違反報告)
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