八百三十三話目 「キングは誰か」 ページ37
「チェックメイト……ハァ、お前恐ろしいな」
『なんでです？』
コトリ、とルッチさんがルークを盤面に置いたわけだが若干引き気味で見てくる。
こっちとしては銀が白刃に晒されている……いや設定ではあるわけだけどそんな状況になってしまってすごくションボリタイムであるわけで、そんな顔される覚えはない。
ビショップ置く瞬間「右足さよならー」とか、ナイト動かしながら「はい左手の人差し指ばいばーい」とか内心で別れを告げながらプレイした俺の気持ちなんて分かんねえだろうよ。
『くそ……銀、ごめんなぁ』
「………そうじゃねえだろバカヤロウ」
『え？』
「まあいい、キングの設定を変えるぞ」
『銀じゃだめなんですか？』
「……飽きる」
『理由、どうなんですかそれ』
駒を並べなおすバカを見ながら思う。
………いや、急激に強くなりすぎだろう。
元よりバカではあるが頭は悪くないのは知っていた。知っていたが俺が思いつきで付けた「設定」だけでこうも変わるなんて思わないだろう。
バカはいつもの「自分＜誰か」の考え方をチェスでも念頭に置くほどのバカだったというだけで、実際は恐ろしくこの手のゲームにおいてのセンスがあったらしい。さっきのゲームでは一戦前とは違って容赦なく駒を捨て、問答無用でこちらの動きを握りつぶそうとしてきた。「それお前の四肢という設定だが、決断速すぎやしないか？」と何度言いかけようとしたか。
そして自分のプレイスタイルの変化に全くもって気づく気配すらない。………やはりバカだな。間違いない。
さて、次の設定はどうしようか。あまりにも思い入れが強すぎると何でもかんでもどんな代償でも放り投げてしまうらしい………なぜ俺がこのバカの為に設定の加減を考えているのか冷静になってみると意味不明だが、それで相手が強くなるなら俺も楽しめる。そう思っておこう。ある意味頭が痛いが。
『ルッチさん？』
「どうした」
『あ、いえ。難しい顔してたんで』
「お前の頭の中が読めなさ過ぎてこうなっているんだバカヤロウ」
『えぇ……でもチェスでは勝ってるじゃないですか』
「まぁな」
『うわ腹立つどや顔ですね……負けたくねえけど負けちゃう悔しい』
「ハッ、そう褒めるな」
『褒めてないです！』
クイーンをつまんだ状態で喚くバカに笑いながら、俺も駒を並べ始めた。
キングを握ったところでふとどうでもいいことを考える。
「設定、か」
『ルッチさん？』
俺だったら、キングは……。
「なんでもない」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 497人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜月レナ(プロフ) - はじめまして(*^-^*)すごく楽しんでに読ませてもらってます（語彙力orz） 更新頑張って下さい(’-’*)♪ (2019年9月6日 21時) (
レス) id: 1844904407 (このIDを非表示/違反報告)
sile - いや最高すぎません？？めちゃくそルッチさん好みにどストライクなんですが。ルッチさんオチだといいなと思ってます(してほしい)ゆっくりで構わないので更新頑張ってください！お体には十分気を使った上でですよ…？w (2019年8月18日 0時) (レス) id: 801c11ec84 (このIDを非表示/違反報告)
リリ - 最高です。これからも応援してます。 (2019年8月13日 1時) (レス) id: 199549db1c (このIDを非表示/違反報告)
レン - ウォォォォォォォォオ！！！！！！！メッチャ面白かった！！！さっっっっっっっいこっう (2019年7月18日 6時) (レス) id: dc4a31061c (このIDを非表示/違反報告)
シスター - 初めまして。シスターと申します。最初の作品から見させて頂きましたが、良い展開になって来ましたね！次が更新されるのが楽しみ過ぎて眠れないですwオチはルッチさんですかね？私の推しなので嬉しいです！ (2019年6月11日 11時) (レス) id: be6a289acb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
