隣の人は 真白 里桜 ページ40
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誰もひどい人じゃないよね!
あたしは、意を決して左隣を見た。
その人は、紫のロングヘアに、深い青のベレー帽をのっけてる。海のような透き通る目は、あたしを見てきょとんとした。
「えっとあの、あたしっ、真白 里桜っていいます!」
とりあえず名乗る。
すると、その人? はメモ帳とペンを取り出し、さらさらと何か書いた。
【初めまして、千登勢といいます。好きに呼んでくれて大丈夫です。】
え、これって筆談、だよね。もしかして、耳が聞こえないのかな。
どうしよう!? 手話とか指文字とかいるの!? どっちも簡単な自己紹介しかできないのに! でも、千登勢さんが読唇術やってたりしたら逆に失礼かも!
その間に、千登勢さんは、またメモ帳にさらさらと何かを書く。
【生まれつき失声症なので、筆談でお願いします。】
あ、失声症なんだ。きっと、辛いんだろうな…………。
「ってことは、耳は聞こえるんですね」
【ええ】
「じゃ、じゃあ、あたし真白 里桜です! まだ来たばかりでよくわからないけど、よろしくお願いします!」
【私も昨日来たばかりなので大丈夫です。こちらこそよろしくお願いします。】
と、そのとき、
「できましたよ。とりあえず、卵焼きとサラダで。パンとジャムはセルフサービスで」
と言って、誰かが出てきた。それと共に、卵焼きの匂いが漂ってくる。
うげ。これはヤバい。
「あの、ご、ごめんなさい、換気扇回して誰か…………」
そう言っても、今のあたしのか細い声じゃ、誰も気づかない。多分、千登勢さんも気づいてない。
その間にも、どんどん気分が悪くなっていく。あたしは鼻と口元を押さえ、何とか耐えようとした。
我慢我慢、我慢我慢。
こんなの、小学生のとき無理矢理食べさせられたオムレツよりも断然ましなんだから!
中学のときも、少しなら卵スープ飲めたんだし、給食のビビンバの錦糸卵も少しは食べられたんだし! 久しぶりとはいえ、たかが匂いでやられるもんか…………!
コト、と、あたしの前に卵焼きが置かれて、現実に引き戻される。すると、あの苦手な匂いが、再び鼻をついた。それまで口呼吸することで防いでたのが、鼻の方へ流れたのだ。
けれど、それにしては匂いが強すぎる。
もしかして、猫の嗅覚まで手に入れちゃったのかな。
「の、ごうぇ、なさ…………!」
鼻を押さえたままなるべく「ごめんなさい」と聞こえるように言うと、
あたしは、食堂を飛び出した。
キッチンへGO 鳴く狐→←路地裏にて初迷子。からの無事到着 流星(るい)
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鳴く狐(プロフ) - 修正失礼しました。 (2019年6月2日 11時) (レス) id: 164fe814fa (このIDを非表示/違反報告)
鳴く狐(プロフ) - ちょっと修正します。 (2019年6月2日 11時) (レス) id: 164fe814fa (このIDを非表示/違反報告)
三日月桜(プロフ) - 修正終わりました (2019年6月2日 1時) (レス) id: 4138aa2156 (このIDを非表示/違反報告)
三日月桜(プロフ) - ちょっと修正にいきます (2019年6月2日 1時) (レス) id: 4138aa2156 (このIDを非表示/違反報告)
グランディ(プロフ) - 続編作成しましたー、これからも宜しくお願いします!!【https://uranai.nosv.org/u.php/novel/vahanaito95/】 (2019年6月1日 23時) (レス) id: 12bfae36c2 (このIDを非表示/違反報告)
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