第四章 ページ26
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冬の寒風が教室の窓を揺らす
暗号のような化学反応式を右から左へ聞き流しているうちに三限の化学基礎は終わりを告げた
ノートは授業最初のあたりしか書かれていない
あとで部隊の先輩に教えてもらおうだなんて考えながら教科書たちを机にしまった
「A!タラタラしてんじゃないわよ!」
「はいはい今日もピリピリしてんね〜」
「うっさい!」
やってきたのは香取葉子
B級上位部隊である香取隊の隊長
気分屋で気性が荒いせいで人に好まれるようなタイプではないが決して悪い人間ではない
良く言えば裏表がないのだ
しかし可愛いところもあるもので昼休みは毎日律儀に彼女の方から瀬鳴の元へやってくる
一年生の頃スカウトされて県外からやってきた瀬鳴を連れ回していたのは紛れもなく香取だ
そのせいか瀬鳴もまた友人が少ない
ボーダーにスカウトされ三門市にやってくるのは珍しくはないがやはり突飛な存在なことに変わりはない
適当に空いてる椅子を見つけて隣にやってきた香取は瀬鳴の机に弁当を広げた
毎日手作り弁当を持ってくる香取と比べて瀬鳴はコンビニで買ってきた菓子パン
たまにならいいのだが毎日菓子パンばかり持ってくるので香取でさえも心配になる
指摘したところで面倒さに負けた瀬鳴が弁当を持ってくるはずもない
「そういえばアンタ風刃の第一候補なんでしょ」
「書面上ではね 実際いつなるかは分からん」
「へー 面倒くさそうね」
ウンウンと頷きながら瀬鳴は菓子パンの袋を開けた
最近会う人は誰も彼も風刃についての話ばかり
必然のことだとは理解しているつもりだが瀬鳴からしたらあまり面白い話ではない
なにより自ら望んで黒トリガー使いになりたいと思うわけではないし瀬鳴は大層素晴らしい人間ではないということを自覚している
迅から風刃を引き継いだとして彼のように上手く使いこなせる自信がなければ意思もない
「実はあんま乗り気じゃないんだよね」
「なにそれ 候補に入らなかった私への嫌味?」
ジト目で睨む香取に瀬鳴は肩を竦めた
こんなこと言える相手は香取しかいないのだから少しくらい大目に見てほしいと瀬鳴は思った
もし師匠の荒船の前でこんな弱音を吐いたら確実に関節技をキメられるに違いない
なんて想像をして思わず肩がブルッと震えた
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あんず(プロフ) - 続編おめでとうございます!!ご自分のペースで構わないので、更新を続けて欲しいです!これからも応援してます! (2021年12月17日 19時) (レス) @page50 id: f3f41a7a80 (このIDを非表示/違反報告)
白雪 - 夢主の解説が完全にニノだ…………!これ聞いてるニノもすごく頷いてそう。 (2021年12月14日 1時) (レス) @page42 id: 567a821487 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ - 二宮隊かっこいいですよね!スーツ姿で弧月持ってるの本当に好きです!夢主ちゃんも末っ子感があって可愛いです!! (2021年10月17日 22時) (レス) @page40 id: 25eb3d3bd0 (このIDを非表示/違反報告)
ナカジマ(プロフ) - すごい次の展開が気になりドキドキしています!これからも応援しています!頑張ってください!! (2021年10月15日 12時) (レス) @page36 id: 94b7e990bf (このIDを非表示/違反報告)
男が苦手な辻 - ぎょえええ終わりですか…ストーリーもキャラ設定も二宮隊も大好きなだけに残念です… (2021年5月27日 2時) (レス) id: 43784786f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ばぐ | 作成日時:2021年1月10日 19時