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食べなくちゃ ページ6

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物心ついたときには既に、俺には母親というものがいなかった。
体が弱く、俺を産んですぐに亡くなったそうだ。

でも、寂しくはなかった。
俺にはとうちゃんがいたから。

とうちゃんは、母親と同じ貧弱な体を持って産まれた俺をいつも心配していた。


「いっぱい食え。いっぱい食って、強い体を作るんだ。食べることは生きることに繋がる。それに腹が満たされれば、幸せな気分になれるだろ?」


俺はとうちゃんの言葉通り、たくさん食べた。
とうちゃんはよく食べる俺を見ると、安心したように笑ってくれた。

……だけど、

その笑顔しか知らずに、甘い蜜だけを吸って生きてきた俺は、知らないことが多すぎたんだ。


片親が稼げる金額が、どれほどのものか。
貧弱な子供を養うために必要な金額は、とれほどのものなのかを。


徐々に窶れていったとうちゃんは、ある日。
ぽっくりと、この世から旅立った。

遠方で暮らす祖父母と協力して、とうちゃんの埋葬を行っているとき。
とうちゃんの軽過ぎる体に、驚愕した。

骨と皮しかないような細い手足。
それを見て、俺は全てを悟った。

とうちゃんは、自分の分の食料も全て俺に与えていたのだと。

俺を引き取った祖父母は、俺を責めなかった。
それが逆に苦しかった。
誰かに罵られたほうが、「父親が死んだのはお前のせいだ」と言われたほうがまだマシだった。

だって、こんなのおかしいだろう。
とうちゃんの命を奪った俺が、こうしてのうのうと生きているだなんて。

だから、祖父母の家に鬼が現れたとき。
祖父母を喰い殺した鬼が、俺に近づいてきたとき。
何処か、救われた気がしたんだ。

あぁ。
これでようやく、俺もとうちゃんのいるところに行ける。
やっと、とうちゃんに謝りにいけるんだって。




俺は、弱い。



食べなくちゃ。
たくさん食べて、強くならなきゃ。

人間を食えば、強くなる。
空腹が満たされる。
最近知った鬼の斬新な味にも、惹かれていった。

どっちでもいい。
人間でも、鬼でも、とにかく食べるんだ。

食べることは、生きることに繋がるから。



……でも、どうしてだろう。

なんで俺は、ここまで食べることに執着しているんだっけ?


_______




「とう、ちゃん……」

稀血の臭い→←借物の異能



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紅いちご - 続編ですか!!楽しみに待ってますね! (2021年11月6日 22時) (レス) @page41 id: 0ffbfabdee (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2021年11月6日 5時) (レス) @page41 id: 6b2570d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - むつき。さん» コメントありがとうございます! 本編でもこの二人の関係性はしんどいので、今後どう夢主ちゃんと絡ませていこうか悩んでいます(苦笑)無限列車が近づいてきて精神が削られていますが、更新頑張っていこうと思います! (2021年11月4日 22時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 冨岡さんと錆兎さんのシーンにめちゃめちゃぐっと来ました(語彙力)更新頑張ってください! (2021年11月3日 18時) (レス) @page38 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - 匿名希望さん» ご指摘ありがとうございます! 本当ですね! 全然気がつきませんでした……ありがとうございます! (2021年10月22日 22時) (レス) @page29 id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年9月22日 15時

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