借物の異能 ページ5
「しょうがないなぁ」
鬼は小さく嘆息し、着物の胸元に手を入れる。
しばらくして、何かを握った状態の拳を取り出した。
鬼は手にしているものを見せつけるように腕を突きだし、掌を上にして指を開く。
『……! それは……っ!』
彼が取り出したのは、耳。
切断部が赤黒い血で固まった、右耳だった。
「これはね、俺が倒した元十二鬼月の耳。ソイツを倒して俺は十二鬼月になったんだ。今じゃ、同じ溢れ者同士なんだけどね」
肉片を手にしている者とは思えないほどの無邪気な笑みを浮かべ、鬼はその耳を自分の口に近づける。
「そして、この鬼の肉を俺が食べると……」
『っ!』
ごくりと、鬼の喉仏が動く。
すると鬼は、胸元の高さまで持ち上げた両手で、パンッと手を叩いた。
その瞬間。
『なっ!?』
「きゃ……っ!」
部屋が、回転した。
床が側面にあり、私は先程まで背後にしていたはずの格子の上に立っている。
「なんと、食べた鬼の能力が使えちゃいま〜す! 能力を使えるのは短い間だけ、同時に二つの能力は得られない、本物の能力には劣るとか、いろいろ欠点はあるけどね」
一つ一つの傷口が牙を向いてくるだけでなく、他の鬼の異能を使うことができるってこと……?
下手な血鬼術より、厄介な力かもしれない。
私は足元の格子の奥に倒れた少女に向けて声をかける。
『危ないので格子にしがみついていてください!』
「は、はい!」
「どんどんいくよぉ。それ、それ、それっ!」
鬼は連続で手を叩く。
その度に後ろ回転する部屋。
私は何度も体を打ち付けながら、刀を構え直し、技を繰り出す。
『参ノ型 稲荷舞』
「おっと、やけになったらダメだよ? ほーら、また“口”が増えちゃった」
鬼は右掌にできた口をこちらに向け、そう微笑する。
……なんとなくわかってきた。
回転する向きは一方向だけ。
そして回転するタイミングは、鬼が手を叩いた一秒後。
間合いを詰めたところで手を叩かれ、正確に頸を狙うことができない。
無駄に刀を振るえば、鬼の口を増やしてしまう……。
なら私は、この状況に対応した型を使うだけだ。
足場の不安定な状態で、遠距離から広範囲の攻撃を可能にする技。
水の呼吸、拾ノ型を応用して生み出した__
『狐の呼吸、弐ノ型
回転するごとに威力を増す技。
それに加え、己の意思を持つように動く狐の呼吸なら……!
「っ!」
__正確に鬼の頸を狙うことが、できる!
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紅いちご - 続編ですか!!楽しみに待ってますね! (2021年11月6日 22時) (レス) @page41 id: 0ffbfabdee (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2021年11月6日 5時) (レス) @page41 id: 6b2570d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - むつき。さん» コメントありがとうございます! 本編でもこの二人の関係性はしんどいので、今後どう夢主ちゃんと絡ませていこうか悩んでいます(苦笑)無限列車が近づいてきて精神が削られていますが、更新頑張っていこうと思います! (2021年11月4日 22時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 冨岡さんと錆兎さんのシーンにめちゃめちゃぐっと来ました(語彙力)更新頑張ってください! (2021年11月3日 18時) (レス) @page38 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - 匿名希望さん» ご指摘ありがとうございます! 本当ですね! 全然気がつきませんでした……ありがとうございます! (2021年10月22日 22時) (レス) @page29 id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年9月22日 15時