錆兎からは ページ14
心の芯から足の爪先まで、頭から冷水を浴びたように冷たくなっていく。
「今のあの人は、俺達が慕っていたあの人ではない。あの人もお前の弱点に気づいていたはずなのに、“アイツ”を倒そうとやけになって__」
錆兎の声が徐々に遠くなり、聞こえなくなっていく。
あの人……鱗滝さんのことだろう。
それなら、“失敗作”というのは……私のことだ。
『……っ』
頭部を殴られているような鈍い痛みが走る。
胸が苦しい。
息が、できない。
失敗作。
そうか、失敗作なんだ私。
刀を折られて、最終選別も生き残れないって断言されて。
育ててくれた鱗滝さんに恩返しだってできていない。
目頭が熱くなり、集中する熱を堪えようと唇を噛み締める。
他の人に貶されるならまだマシだった。
寺の子供達と、先生と、おじさんとおばさんと、鱗滝さん。そして錆兎と真菰。
彼ら以外の人から言われた罵倒の方が、辛くなかったかもしれない。
信頼している人に辛い言葉を突きつけられるほうが、よっぽど苦しいし、痛いし、悲しい。
熱いものが頬を伝い、それを手で拭いながら呟く。
『錆兎からは、』
あぁ、ダメだ。
錆兎に負けてから、なんでこうも涙脆くなってしまったんだろう。
私はもっと、強かったはずだ。
強くならなきゃいけなかったはずなのに。
『錆兎からは、そんなこと、言われたくなかったなぁ……っ』
「っ! 違、そういう意味じゃ__」
錆兎は焦ったような声で何かをいいかけるが、それを聞く気にはなれなかった。
私は錆兎に背を向け、木々の奥へと走り出す。
勿論、帰り道なんかわからない。
ただ錆兎の声を聞きたくなくて、この場所から離れたいだけだった。
『はぁ、はぁ……っ』
涙のせいか、いつものように全集中の呼吸をすることができない。
右手に握る木刀が、酷く重く感じた。
……ずっと、気になってはいたんだ。
錆兎は私に言った。
絆や繋がりを結べる相手。
共に競い、高め合える者が現れるまで待て、と。
それって、錆兎や真菰では駄目なのだろうか。
二人とは、絆や繋がりを結ぶことはできないのだろうか。
……二人は、私と関係を持つことを嫌がっているのかな。
『……っ』
苦しくなるから、考えないようにしていたのに。
涙と共にマイナスな感情が溢れ、私は足を止めて左腕で両目を覆う。
「大丈夫か?」
『……っ!?』
「なんだか君から、凄く悲しい匂いがしたんだ」
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紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです!更新頑張ります! (2021年8月14日 20時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです!眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです!ここからどういう展開になるのか楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年8月14日 10時