【ONEPIECE】鎧を纏う2【男主】 (ページ30)

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『あついです。』

その言葉一つで2人はピタリと挙動を止め、クザンは能力を使い、サカズキはとりあえず心を落ち着かける。
この2人の小競り合いを一言で制するのはこの少年だけだろう。

『えへへ、ひんやり。涼しいです、クザンおにいさん。』

その一言でクザンはまるで熱に当てられたかのように額に手を当てる。
"おにいさん"。その言葉にクラっと来たのだ。この頃の少年にその呼び名を強制したのは、自分であるのに。

隣で一体こいつはなんなんだ。という視線を送る赤犬に、少年は、微笑みかける。
…いかにも、そういう対応に慣れていない赤犬は素っ気なく帽子を深く被るだけなのだが。

『サカズキのおじさん、お膝に乗せて欲しいです！』

暑いのが苦手な少年は、あまりサカズキにベタベタと接触はせず、近くにいればひんやり涼しいクザンの元にいることが多かった。
だが稀に、サカズキにくっつきに行くことがあるのだ。

…少年曰く、それは気分であったり、何かを察知したりと色々な理由があるらしい。
何を察知しているのか…それは赤犬の機嫌と青キジがベタベタしてくるであろうという予測である。

サカズキは何も言わずに少年へ手を伸ばし、膝元へと連れ去る。
落ちないようにと腹に手を添えれば、少年はにっこりと笑って帽子の下から覗き込んでくる。

『…えへへ。サカズキのおじさん、あたたかいですね！』

そう笑う少年に胸の高鳴りが抑えきれない赤犬。
「良かったねぇサカズキィ。」とおちょくる黄猿。
未だ熱が冷めない青キジ。

腹に添えている手を両手で握る少年の様子をじっと眺める。
両手で包んでも溢れる自分の手に、体格差と少年の小ささを実感させられる。膝にはなにか乗っているのかと不安になるくらい軽い。

そこまで弱くないのは理解しているが、なんだか力を入れれば壊してしまいそうで、赤犬は少し恐怖を覚える。
しかし反対に壊してしまいたい。という欲が数ミリ単位で存在するのは、人間の性なのだろうか。

少しクセのついた髪を撫でる。

ボルサリーノ「随分今日のAくんはサカズキにベッタリなんだねぇ〜」

赤犬に少し椅子を寄せた黄猿が、少年の顔を覗き込みながら、そう呟く。

『…えへへ、だって、サカズキおじさんかっこいいから。』

100点満点の笑顔でそう言われた張本人は、意識が遥遠くまで吹っ飛んでいた。
代わりに隣でダウンしていた青キジが戻ってきたが。