10歩目 ページ12
顔、真っ赤。
東雲蒼は気付かれないように笑った。最近新しく出来た兄は自分とは正反対に静かで一歩引いている先輩だった。
母に幸せになってもらうため、蒼はAと仲良くなる作戦を実行した。蒼の考えでは会ったその日に絆せるはずだったがAは予想外にガードが固かった。珍しいタイプだ。
ただあまりにも固すぎる。なので本心を話すことにした。母に幸せになってほしい。その思いはAにも伝わったようで、初めて名前を呼んでくれた。
その時に見えた、金色の瞳。宝石のような輝きは今でも蒼の胸に強く残っている。心の底から感嘆の声が出るだなんて思っていなかった。
つまるところ、蒼はAが気に入った。自分の持てる全ての力を使い、Aを絆すことに決めたのだ。
なので蒼は今、腕捲りを直す振りをして後ろから抱きしめた。どんな反応をするのか楽しみだった蒼は、顔を真っ赤にしてて慌てるAに笑った。馬鹿にしたわけではない。
可愛いと、そう思ったからだ。
―――――――――――あれ?
男に可愛いって思うなんて、おかしい!!
なんの疑問も抱かず笑った自分が恐ろしい。何故、男なのに、どうした俺!?
「兄さん、少しトイレに行ってくるね」
「う、うん」
落ち着け、と心に何度も呼び掛ける。手洗い場の扉を閉めた蒼は頭を抱えた。だってあまりにもおかしい思考だ。可愛いって何だ。女子にも思ったことないのに。
少し落ち着いた蒼はトイレから出る。リビングに戻ると、エプロン姿の兄は味噌汁を作っていた。
「あ、お、お帰り。もうすぐ出来るから、座ってていいよ」
まだ頬が赤い。そんなに刺激が強かっただろうか。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
微笑んだ蒼は椅子に座る。ちょうど目の前で味噌汁を作るAを見つめられる位置だ。そんなことに気付いていないAは出来た味噌汁を味見した。エプロン姿も相まって、まるで、
「何だか新婚夫婦みたいだね」
「っ!?げほっ!!」
気管に味噌汁が入ったAは咳き込んだ。慌てて駆け寄ろうとすると手で制される。
「だい、じょぶ……げほっ……」
自分はまた何かいけないことでも言っただろうか。蒼は何が悪かったのか分からない。
エプロンを取ったAはハンバーグを持ってくる。Aが作ったハンバーグは肉汁たっぷりで店に負けない味だ。
「すごい!これとても美味しいよ!」
「あ、ありがと」
Aの口角が上がり、前髪の隙間から金の瞳が覗く。嬉しそうなその顔を初めて見た蒼はまた、気付かれないように笑った。
1057人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
埋夜冬(プロフ) - 名無しさん» 読んでいただきありがとうございます!ありますよー!蒼くんの方が高いです!そうですねぇ、大体10センチくらい差があると思っていただければ! (2022年3月19日 7時) (レス) id: 19b82d3da7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 身長差とかってあるんですかね (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お伺いしたいことがあるんですが (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 古紗雪さん» 待っててくださりありがとうございます!更新頑張りますね!もうガン見しててください(笑) (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 龍晴さん» そろそろ続編にいきますよ!そこで完結です!夢主くんと蒼くんはどうなるのか!?麗は成敗出来るのか!?モモの正体は!?乞うご期待ですよ! (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:埋夜冬 | 作成日時:2018年12月28日 1時