致命傷を負わせに行こうか ページ29
ファルはノヴァーレとクルシュの戦いを見ながら次の作戦を考えていた。
ノヴァーレはまだAのスキルを理解していない。一先ずAを後方に行かせれば安心だ。困ったら後退できる。と、その前に。
「ああっ・・・・・・オリオンがッ!ぼく、分かってたのに・・・・・・!オリオン・・・・・・!!」
パニックを起こしているAを正気に戻さなければ。
「A、A聞くんだ。Aのスキルでオリオンをこちらに寄せることができる。ヴィーシャもラナストもクルシュもハルもだ。Aがこの戦いの要になる。絶対に死んじゃいけない。狂ってもいけない。できるな?」
しゃくりをあげるAがファルを見る。ファルは次々零れる涙を拭ってやると髪を撫でた。
ああ、ファルの手だ。落ち着く、優しい手。
「うん・・・・・・ッ!」
「いい子だ」
ファルがふわりと微笑むので、Aは涙を拭った。周りの状況をしっかり理解するために見渡す。
クルシュの片腕は折れている。ラナストは接近戦が出来ない。ヴィーシャも腕が抉れている。オリオンはもう戦闘不能だ。ハルはずっと治癒魔法を掛けているけど魔力の限界が近いのかもしれない。息が荒くて、今にも倒れてしまいそうだ。ファルは他に比べたら軽傷かもしれないが、血も流れているしボロボロ。Aと、未だ攻撃を仕掛けていないエルはまだ無傷だ。
「まずはクルシュ以外の皆をここに転送することはできるかな?ファルは私と魔王を」
「ハッ!いいのか?俺は裏切り者だろう」
頬から流れる血を荒く拭いながらファルが鼻で笑う。そんなファルを見て、エルは口角を上げた。
「問題ないよ。だって君、Aが味方にいる方につくでしょう?」
するり、と紋があるAの首元を撫でてファルを見れば、盛大な舌打ちが聞こえた。
「ノヴァーレ様に勝つのは無理だぞ」
「ファルが本気を出したら分からないよ?」
言外に本気を出せよと釘を刺されていることに気付いたファルはもう一度舌打ちをした。ため息をついてAを見る。
「A、頼んだ」
「うん!」
ラナスト、オリオン、ハル、ヴィーシャは僕のところに集まって!
ふわりと風が髪を揺らす。目を開くと先程までいなかったはずのラナスト達が集まっていた。
「クルシュと私たちが交代する。A、よろしくね。ラナスト、クルシュの応急処置を」
「はい!」
「御意に」
さて。
致命傷を負わせに行こうか。
あまりうちの騎士を虐めないでほしいな→←その子はお前たちの何?
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埋夜冬(プロフ) - 千々さん» 最後までお読み下さりありがとうございます!!!もう本当にありがとうございます!超絶励みになってました!(語彙力) 主人公くんに万が一飽きると魔王様が攫う気満々ですが、その前にエル様がガードしにきます。玩具を取られたくないからね!!ガードが多いね主人公! (2021年3月13日 11時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 完結おめでとうございます! とても面白かったです! やっぱりファルの主人公に対する執着がいいなあと思いました。そしてファルが主人公に飽きる日は来ないらしいですが、もしそんなことになったら私が主人公を守りにいきます(( 本当にお疲れさまでした! (2021年3月13日 11時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます!!作者は更新時間まばらですが、これからも精一杯頑張らせていただきます!今後もよろしくお願いします! (2020年8月26日 12時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 続編おめでとうございます! とても楽しくお話を読ませていただいています! 楽しいお話の中にちりばめられた謎がとても気になって……! これからも読ませていただきます! 続きを楽しみにしていますね! (2020年8月26日 8時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ふわふわありすさん» ありがとうございます!予定では続編でちゃんと終われるはず!頑張りますのでお楽しみに!コメントありがとうございます! (2020年8月26日 5時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年8月25日 23時