第40話 ページ42
あの生配信が終わってすぐ、Sakiは走り出した。『告白してくる』と駆けていったSakiは今まで見たことないほど真剣な顔だったので誰も止めずに見送った。
あれはAに向けたラブソングで、告白場所の指定だったのだろう。だから早く公開したいと。ああ、なるほど。愛しているんだなぁ。
シロは今Sakiのことを理解して、何か重いものを抱えている彼の表情が柔くなっているのに安心した。
「でも良かったよ。Sakiが今幸せそうなのは間違いなくお前のおかげみたいだし」
顔を見せなくてそれぞれに目的があるバンドでも、仲間という意識は出てくるし共通の趣味がある事などもわかってくる。シロはメンバーの中でもSakiの事を気にかけていた。
「そ、そんな・・・・・・!俺の方が幸せなんです!一緒にいてくれるおかげで、毎日楽しくて」
へへ、と顔を赤らめて笑うA。隣の咲夜は今すぐ抱きしめたい!と顔に書いてあるように見えて、シロはくすくす笑った。
「会えてよかった。これからもSakiのことをよろしくな。お前といればSakiもスランプにならなさそうだし。でもSaki、惚気けるのは勘弁だぞ!」
「善処する」
「そこは全力で頑張れよぉ!!」
何年も前から一緒にいた友達のようなノリだ。咲夜も笑っているのを見て、Aも良かったと笑った。咲夜にはちゃんと、テンポのよい会話をし合える友人がいるのだと。
シロと別れて、街中に出る。前を歩く咲夜は上機嫌で鼻歌を歌っていた。
「ねぇA」
「何?」
「その・・・・・・Aさえ良ければ、行きたいところがあるんだけど」
歩くのを止めて、咲夜と見つめ合う。真剣な瞳。言うのを躊躇っていたから、きっととても大事な所なのだと分かる。
「どこに行きたいの?」
「――――――Aの、ご家族のお墓」
息を飲んだ。
自分でもお盆の時以外行かないところだ。本当はもっと行かなければならないのだろうけど、どうしても辛くなってしまって行くのを躊躇ってしまうところ。
「シロに紹介してさ、やっぱりAのこと育ててくれた家族の人達に挨拶したいなぁって思って。その人たちがいないと、Aに会えなかったからさ」
繋いでいる手をきゅっと握ってAを見る咲夜に、鼻の奥がツンとした。目が潤んで咲夜の顔がぼやける。
「お、俺も、咲夜を紹介したい・・・・・・!」
辛うじてそう言ってこぼれる涙が周りに見えないように下を向いた。咲夜はそんなAの髪をポンポンと撫でて手を引いた。
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*-七海-*@めぐ民 - う〜ん…泣ける!もう、今我情緒不安定だからww涙めっちゃ出るんやけどww (2020年8月25日 21時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
*-七海-*@めぐ民 - 埋夜冬さん» なりましょう!(2人は我らが見てるって事を知らないのだな…) (2020年8月11日 23時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - *-七海-*@めぐ民さん» よし!2人で木になりましょう!!! (2020年8月9日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
*-七海-*@めぐ民 - 埋夜冬さん» wwwじゃあ、我はその木の枝役に立候補します!!ww (2020年8月9日 22時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - *-七海-*@めぐ民さん» でしょう!?私はめちゃくちゃイケメンな相手にやってるのを見る木の葉役に立候補します!!! (2020年8月9日 13時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年6月28日 22時