第20話 ページ22
「ふー、お腹いっぱい!」
カルボナーラとカレーの皿は綺麗になった。人気になっているだけあってトロトロで美味しかった。ボリュームもそれなりにあったし、大満足だ。
「連れてきてくれてありがとう、サクヤ。すっごい美味しかった」
んふふ、と笑うとサクヤも幸せそうに笑い返した。
2人はお互い注文したものを1口交換して、改めてまたこの店に来ようと約束した。
「良かった。たまにはこういうのもいいね」
外へ出ると辺りは真っ暗だ。秋になって夜になるのが早くなったからだろう。肌寒い風が吹いた。
「ねえ、もう1つ行きたいところがあるんだけど付いてきてくれる?」
「もちろん」
聞かなくても、俺は一緒に行くのにな。
サクヤはいつも相手主体だ。ダメだと言われればやらないし、いいと言われればやる。主導権はいつもこちらだ。本当に嫌なことはしないし、いつも気を遣っていろんなことをしてくれる。
それはされている側からすれば心地良いものだ。だがサクヤは、本当にこんな生活で満足しているのだろうか。こんな、ただ相手に尽くすだけの、対等ではない関係で。
「ここだよ」
思考が止まる。足も止まる。
ここ、と指した場所はアクセサリーショップだった。白で統一された壁には黒い筆記体で何か書いてある。多分店の名前だ。
「ずっと考えてたんだ。お揃いのものがほしいなって」
店に入るとサクヤはAの手を引っ張りながら奥へと進む。ある棚のところで止まってこちらを見た。
「会社で付けていてもバレないものがいいと思って。今の時期ならシャツで隠れるし、シンプルなものが多いからこの中で選んで欲しいんだ」
並んでいたのはドッグタグだ。お互いのイニシャルをその場で彫って渡してくれるらしい。
シンプルで平べったいので周りに気付かれることも無い。ブレスレットなどよりもしっかり隠れるものだ。
「本当に俺が選んでいいの?じゃあ・・・・・・これがいいな」
Aが手に取ったのは黒ヒモに銀のドッグタグ。チェーンよりも会社にバレる確率が減ったのでいいとしよう。
「じゃあ周りのもの見て待っていて。店員さんと話してくるね」
ニコリと笑われ体を商品の方へ向かされる。拒否する間もなく背中を押され、商品を見ることにした。
サクヤは店員さんとにこやかに話している。何を話しているのか、気になってしょうがなかった。
82人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
*-七海-*@めぐ民 - う〜ん…泣ける!もう、今我情緒不安定だからww涙めっちゃ出るんやけどww (2020年8月25日 21時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
*-七海-*@めぐ民 - 埋夜冬さん» なりましょう!(2人は我らが見てるって事を知らないのだな…) (2020年8月11日 23時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - *-七海-*@めぐ民さん» よし!2人で木になりましょう!!! (2020年8月9日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
*-七海-*@めぐ民 - 埋夜冬さん» wwwじゃあ、我はその木の枝役に立候補します!!ww (2020年8月9日 22時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - *-七海-*@めぐ民さん» でしょう!?私はめちゃくちゃイケメンな相手にやってるのを見る木の葉役に立候補します!!! (2020年8月9日 13時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年6月28日 22時