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だからあの時、最後の力を振り絞り・・・ ページ38

特殊スキル[集中]の特訓はとにかくスキルを使うことだ。エルの広い別荘の広い庭で特訓を続けた。前より小さいものを対象に発動できるようになったし、瞬時の発動もかなりできるよ
うになった。

そして今日は、あの顔合わせから1週間経った。つまり、旅立ちの日だ。

「Aのことは俺が守る。傷一つつけないからな」

ふわふわの薄桃色の髪の毛を撫でたファルは、「いつもありがとう」と笑うAを見て目を細めた。

怪我をしてAと会った時、最後の力を振り絞って殺してやろうかと思った。だがあの低級モンスターが近付いている。あのウサギに喰われて死ぬより、俺をモンスターだと勘違いしている人間に助けられた方がマシだ。安全な所で人間も喰ってやるつもりだった。

だが触れられた瞬間、その膨大な魔力に言葉を失った。こんな人間ごときが、一部魔族をも超える魔力を持っているだと?

一体どんな魔法を使うかと思っていたのだが、Aは逃げた。必死に逃げていた。魔法を首に食らっても必死だった。
どうして魔力を使わない?

モンスターが入れないバリアをくぐり家に入った時、Aは言った。『手当しなきゃ』、そう言って俺を抱き上げて綺麗にして、薬草を塗りこんだ。
自分だって怪我をしているのに。どくどくと流れる血を放っておいて、呪いと怪我でどうしようもない俺を丁寧に介抱した。

人間は、そんなに酷い奴らばかりではないのかもしれない。このふわふわしたあたたかい人間だけ、特別なのかもしれない。見つめる瞳は優しかった。

俺はその目に、
あたたかな雰囲気に、
優しさに、
表情に、
憎しみと恐れ以外の感情を初めて抱いた。

だからあの時最後の力を振り絞り、治癒魔法とあの契約を"お互いの血"で交した。魔力はその時に尽きた。

だから俺はAから離れないし、命を救い特別な思いを教えてくれたAを守り抜く義務がある。
俺たちの一族は、特別な相手を一生傍におくんだ。
自分で傍にいると決めた以上さながら騎士のように。

それに自分でもAがバカにされたり傷つくのは見たくない。だからラナストとかいうアホ雷に言葉に怒り、Aの魔力の断片を見せた。

これでも一族の次期(おさ)となる身だ。殺気には自信がある。

いつかあちらの王や父に、契約したAを見せたいと思う。
だから、魔王討伐に参加したのだ。





あちらの王も父も驚くだろう。
俺がした、Aも知らない、契約の内容に。

え、え、待ってこれ手を振っていいの?→←出発まで意外と時間ないからファルと特訓でもしよう



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埋夜冬(プロフ) - ふわふわありすさん» わぁ!ありがとうございます!転生ものにハマってからずっと書きたかったものなのでそんなに褒めてもらえて嬉しい限りです!これからも応援よろしくお願いいたします! (2020年8月2日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。初期の頃から楽しく読ませてもらってます。オリジナル作品でこんなに面白くて設定がしっかりしているなんて、尊敬します…。文章力も羨ましい限り(泣) 応援しております、頑張ってください!!楽しみに待ってますっ (2020年8月2日 21時) (レス) id: 4a3a7aaa8a (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます!!サブタイトル忘れてることに気付いて慌ててつけました(笑)まだまだ続きますので、これからも応援よろしくお願いします!コメントありがとうございました (2020年6月28日 7時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - やっぱこの作品好きだなぁ。初期の方から応援させていただいているんですが、サブタイトルだったりお話の展開をものすごく楽しみにしています! (2020年6月28日 7時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年4月15日 6時

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