34冊目 ページ37
次の日。昨日言った通り遅く起きて軽食で朝を済ませ、お菓子を大量に皿に盛り付けゲーム機をセットし湊とゲームを始めた。
湊の家にゲーム機があったことには驚いた。本人いわく「前に書いた小説のネタとしてこういうゲーム機が必要であの編集長に買いに行ってもらった」らしい。やり始めたら止まらなくて、気付いたら締め切りギリギリになっててびっくりしたようだ。
そういえば出版社の訓の１つに“作家にゲームを渡さない”っていうのがあった。あれは湊が犯人か。
「次カートゲームやろ、俺ゲーム世界だと車の運転上手いよ」
「現実世界でも出来てほし」
「無理」
即答だった。
湊からしたら、運転するためにはまず免許を取るために自動車学校に行かなくてはならない。この生活ぶりから湊に外に行き集団で過ごしてもらうことは無理だろう。
Aは苦笑いをした。
本人の言った通り運転は超絶上手くて常に1位を取りまくっていた。Aは初心者なのに容赦ない。１周差が付いてるのに亀投げてきた。ひどい。
あー！と怒ろうとしたのだが、湊の目が小説のネタを見つけたときのようにキラキラしていて怒るに怒れなかった。ずるいなぁと思う。その瞳のままこちらを向いて笑うから、余計に。
好きだなぁ、と思う。
「……ねぇ」
ふと湊が、真剣な声で話した。
「専属編集者になってくれてありがとね。何度も言うけど、あの小説はAがいなかったら出来てない」
まばたきを繰り返したAはゲームのリモコンを落として否定する。
「そ、そんなことありません！俺なんてまだまだ未熟で……。湊先生にお礼されるようなことしてないんです！」
ありがとう、なんて言いたいのはこちらなのだ。
こんな素敵な作品を書いてくださって、専属編集者として仕事をさせていただいて、
俺に恋を教えてくれて、
ありがとうございます、湊先生。
なんて、言えたらどれだけいいだろう。
「俺は、先生の小説が好きです。きっとファンの方々にも言われてるでしょうが、引き込まれるし自分のことのように書かれてて共感できるところがたくさんある。大好きです、湊先生の小説」
湊先生のことも。
湊がいきなりどうしてそんなことを言ったのか分からないが、お別れの言葉のように聞こえた。嫌だ、それは嫌だ。
「俺はこれからも湊先生のもとで編集者を続けていきたいです！」
意を決して湊を見ると、泣きそうな笑顔でこちらを見つめていた。
「ありがと」
伸ばされた手は、くしゃりとAの頭を撫でたのだった。
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通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 有難うございます！ (2019年8月17日 12時) (
レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 通りすがりの葉っぱさん» ない……ですね。設定してませんでした。私は妄想するとき夢主くんを「涼(りょう)」と呼んでます！自由に付けてくださって大丈夫ですよ！！ (2019年8月17日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 主人公の名前って設定無しだと何になりますかね？ (2019年8月16日 14時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - アリアさん» そ、そんな……！(照)ありがとうございます！ライバルというか引っ掻き回すというかーって感じなんですけど、その分キュンキュン度をあげていきたいと思います！お楽しみに！！☆ (2019年8月10日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - えちょっと続編すっごい面白そう...いや、この作者を疑うのは止めよう。絶対面白いよ!凜音の小説も待ってます☆ (2019年8月9日 18時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2019年4月23日 23時
