27冊目 ページ30
凛音の仕事は早いもので、キャラのデザインを描いて持ってきた。受けキャラの子なんて湊の想像通りで、凛音はやはり天才なのだと再認識させられる。
悪魔にはもう少し優しさを足してもらった。悪魔と言えどそこまで残忍な設定にしていない。怖い顔だったのでキャラの性格を説明した。
Aと自分が中心の世界にいても仕事の話にると目付きが変わった。集中している、作家としての顔。こういうところは尊敬できる。湊はオンオフの切り替えが得意でないから。
残りは世界観の話だが、現代であることと主人公の部屋の設定だけを教えた。湊は現代設定で小説を書くとき細かくは決めない。起承転結だけを考えて話を進める。その方が自由な作風になる。そしてウケもいい。
凛音はそれでも文句を言わず描きあげることを約束した。
ついでに小説バージョンを渡しておいた。漫画と同時に小説バージョンも販売することが決まっているので書いてたのだ。Aがコピーしておいてくれた。用意周到すぎる。
「びっくりしましたよ。凛音があんなに本気で謝ってくるなんて」
凛音が帰ってからAはそう言った。やはり今までの謝り方もあんな感じで許してもらえたのか。
「九条先生、何か言ってくれたんですか?」
「……別に。専属編集者に迷惑を掛けるなって言っただけ。Aはいつも通り天宮のペースになってたから」
あ、あはは……とAは苦笑いをした。流されるという自覚はあるのか。
「凛音だと何か駄目なんですよね。他の友達なら怒れるのに」
それはおそらく、凛音がそう仕掛けているからだ。凛音は自分をどう見せたらいいか分かっている。彼はずっと周りと心理戦をしている感じだろう。
それと、従兄弟だからというのもある。先程のように“仕方ないか、凛音だもんな”と思うのは長らく一緒にいる相手ほど思うことだ。
ずるいな、と湊は思う。何がずるいと感じているは自分でもわからないのに。
「ねぇ、俺のことも名前で呼ばない?」
Aの特別になれたらいいと、そう思う。
何故だ。
「え!?いやいけませんよ!」
「俺はAのこと名前で呼んでるし、家でも九条先生とか言われるの堅苦しい」
確かに家でも張り詰めているのはしんどい。立場を優先するか湊を優先するか二択に迫られたAは、うぅ……と唸る。
「……み、湊先生っ!」
名前呼びというのはクリアだ。今はこれで許してほしい。
「まぁ。じゃあこれからはそう呼んでね」
よろしく、A。と言った声は、甘く響いたような気がした。
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通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 有難うございます! (2019年8月17日 12時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 通りすがりの葉っぱさん» ない……ですね。設定してませんでした。私は妄想するとき夢主くんを「涼(りょう)」と呼んでます!自由に付けてくださって大丈夫ですよ!! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 主人公の名前って設定無しだと何になりますかね? (2019年8月16日 14時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - アリアさん» そ、そんな……!(照)ありがとうございます!ライバルというか引っ掻き回すというかーって感じなんですけど、その分キュンキュン度をあげていきたいと思います!お楽しみに!!☆ (2019年8月10日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - えちょっと続編すっごい面白そう...いや、この作者を疑うのは止めよう。絶対面白いよ!凜音の小説も待ってます☆ (2019年8月9日 18時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年4月23日 23時