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11冊目 ページ13

朝。いい匂いがしたので布団から起き上がりリビングに行った湊は誰もいないことに驚いた。
朝食はスクランブルエッグ。白米に味噌汁もある。美味しそうな匂いはこれだろう。だがしかし、作った本人がいない。

どこに行ったんだろう。湊は部屋を全て見回った。洗面台、彼の部屋、ベランダ…。どこを探しても同居し始めた編集者がいない。おかしい。湊はもう一度リビングに戻った。

食事だけ置いてあり家に誰もいないその光景は、湊の思い出したくもない幼少期を思い出させた。

誰もいなくて、寂しくて、久々に一緒に食事をしてもろくに反応を返してくれなかった両親。息子だとも思っていないような冷えた視線―――――。

湊はその光景を払うように頭を振った。違う。今は一人じゃない。どうせすぐに帰ってくる。大丈夫、大丈夫………。

湊はせっかく編集者が作ってくれた朝食を食べて帰ってくるのを待とうと思った。どこでこんな料理スキルを身につけてきたのだろうか。美味しい。一度箸をつけたら止まらない。

「ごちそうさま」

静かな食事。心なしか家の空気も冷たく感じる。心細さを感じながら食器を洗い場に置いた辺りで、門を閉める音が響く。
もしかして、

「ただいま戻、うっ!?」

扉を開けた編集者を、湊は思いっきり抱き締めた。子供っぽいとか、近所に見られたら変な噂が立つとか、そんなことどうでもいい。
今湊を支配している感情は『怖かった』だ。

「……いきなりいなくなってたらびっくりする」

また捨てられるのではと、怖くて仕方がなかった。編集者を愛川にしていたのは湊の境遇を愛川が分かっているからだ。愛川は人をみる目がある。その愛川が連れてきた且つ家事能力抜群で湊についていけそうな人物を編集者にしたかった。その点この新人編集者はピッタリだ。現にこんなふうに受け入れてくれているのだから。

「昨日のご飯で胃袋掴まれたから、もうAのじゃないと満足できない」

『怖かった』という感情を隠すため湊はそう言う。これも本心だからいいのだ。
初めて名前を読んだのも、特別意味があるようなことじゃない。

ただ、初めて読んだ新人編集者の名前は、自然と口に出せるような、温かさがあった。
湊にはまだ、それが何なのか分からない。

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通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 有難うございます! (2019年8月17日 12時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 通りすがりの葉っぱさん» ない……ですね。設定してませんでした。私は妄想するとき夢主くんを「涼(りょう)」と呼んでます!自由に付けてくださって大丈夫ですよ!! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 主人公の名前って設定無しだと何になりますかね? (2019年8月16日 14時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - アリアさん» そ、そんな……!(照)ありがとうございます!ライバルというか引っ掻き回すというかーって感じなんですけど、その分キュンキュン度をあげていきたいと思います!お楽しみに!!☆ (2019年8月10日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - えちょっと続編すっごい面白そう...いや、この作者を疑うのは止めよう。絶対面白いよ!凜音の小説も待ってます☆ (2019年8月9日 18時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年4月23日 23時

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