兎13匹 ページ16
Aは自分を捕まえ報復した奴等を殴ったとき、彩兎を裏切ったような気持ちになった。
Aのことを恐れず、一人でいたAに光と温かさを与えたのは彩兎だ。Aは彩兎のためなら何だってするつもりだし、彩兎の言うことだけは余程理不尽じゃなければ従うつもりだった。
でもあの時殴り返してしまった。変わろうしているとAのために怒ってくれた彩兎の気持ちを裏切った。それは自分の中で許せない事実だ。罪悪感で胸が潰れそうなほど痛い。
「ごめんな」
「大丈夫ですよ。私は怒ってません。むしろあなたがここへ来て安心しました。怪我は?痛いところはないですか?」
彩兎は抱きしめる力を強くしたと同時に髪を撫でる。彩兎にとって無くてはならない存在が今自分の腕の中にいることに心から安堵した。
「………特になか」
嘘だ。Aの制服には靴跡が多数残っている。少なくとも幾つかの打撲傷があるはずだ。服の上から気づかないだけで脱がせたらもっと酷いなんてこともあり得る。
彩兎は抱きしめることを止め、罪悪感にうちひしがれているAのブレザーを脱がせた。
「何しとーと?」
「手当てをしますから服を脱がせようかと。ほら、ネクタイも」
彩兎がネクタイに手をかけた辺りでAは慌てて止めた。
「だからなかとよ!?」
ネクタイを守るAの手に彩兎は自分の手を重ねる。
「これでも私は保健教諭ですよ?制服の靴跡からして幾つかの打撲傷があるのは確かです。無かったら無かったで安心しますから、見せてください」
お願いします。と重ねた手に力を込めると目を逸らしたAは短く息を吐いた。
「………敵わんとね、あんたには」
Aは諦めてネクタイをほどいた。これだけ大切にされているのだ。そう考えると拒否し続けていたら嫌われてしまうかもしれない。それが怖い。彩兎としてはもうAと離れる運命なんて迎えるつもりはないが。
シャツを脱がせ靴跡があった辺りの下着を捲っていく。ここは赤くなっているが腫れてはいない。この程度なら大丈夫。ここは内出血している。ここは血が滲んでいる。手当てが必要だ。
「痛かったでしょう」
「……別に」
結果として一番酷かったのは左腕だ。自分の身を守っていたからか打撲傷が酷い。腫れてしまっている。湿布と包帯を巻いて一段落だ。
ふと、左腕の下に巻いた覚えのない包帯が巻かれていることに気づいた。
「天崎くん、これは?」
「ああ、これは―――――――」
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埋夜冬(プロフ) - 。#vllさん» そうなんですか!?これの発案者は作者のお友達なんですけど、その子がどうしても兎を名前に入れたいって言ってました。ヤンデレ好きなので関係しているかもしれないですね!最後までお読みくださりありがとうございました! (2019年10月25日 23時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
。#vll - 兎系の人はやんでれと聞いたことがあります、彩兎くんの名前と関係してそー。と勝手に考えていました。とても面白い作品でした。♪ヽ(´▽`)/ (2019年10月25日 12時) (レス) id: 01ebef5845 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 紫園さん» どうもありがとうございます!二人とも尊く書けたのからよかったです!方言は私も書いてて楽しかったです!この作品を好きになっていただきありがとうございました! (2019年5月1日 18時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
紫園(プロフ) - 最後までお疲れ様でした!本当に尊い2人です(´;ω;`)方言とかも最高でした! (2019年4月28日 16時) (レス) id: a3fbe17e50 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 李守文さん» 嬉しい限りですありがとうございます!!!私も博多弁書いてて楽しかったです!そして同じように日常で使いました(笑) 今後も作品を出していきますのでどうぞよろしくお願いします!この作品を好きにいただいてありがとうございました♪ (2019年4月27日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年1月26日 16時