番外編 ページ43
「なぁ、A」
「何?」
今日は休日で仕事も何もない日。オルバと2人でテレビを見ていると、オルバはいつになく真剣な瞳を向けた。
「聞きたかったんだが、Aの願いは何だったんだ?」
ずっと聞けなかったAの願い。人になってからAとの生活が幸せすぎて忘れていたが、あの時のAの願いを聞けていなかった。
「……死んでもずっとオルバといること」
フイっと顔を背けたA。耳が赤くなっているのをオルバは見逃さなかった。恋人として一緒に住むようになってから、たまにAはこうしてデレ爆弾を落としてくる。
そんなAの髪にキスをして、ポンポンと撫でる。
「じゃあ俺と会う前の願いは?」
悪魔がAの元に現れたのは強い願いの力に引っ張られたからだ。つまりオルバと出会う前に願いがあったということ。
「――――最期を、看取ってもらうこと」
ポツリとAが零したのは、両親もいない中病気で倒れ、苦しんでいた時の願い。
「医者とかじゃなくて、知り合った人に最期を看取ってほしかった。看取ってもらうってことは、それなりに親しい証だと思ってる。だがら誰かに看取ってほしかった」
死ぬ前、Aの傍にいたのは悪魔。だからあの時死んでいても、Aの願いは叶っていたのだ。
「でも願ったら、その願いを叶えるために仮初の誰かと仲良くなるでしょ?それに願いは、自分の力で叶えるためにあると思ってる。簡単に叶えたくなかったんだ。自分の力で、どうにかしたかった」
でも今更死ぬ人と仲良くなって嬉しい人はいないだろう。看取ってもらいたい、でもこの願いは叶わなくていい。そう考えた。
「だからいつも、ああいう顔をしていたんだな」
オルバは納得した。
思えばAが悲しそうな顔をする時は、悪魔の契約を解消、つまり離れる時だった。
反対に、「そっか」と笑う時は離れないとわかった時。
なんだ、こんなにヒントが散りばめられているじゃないか。
「ああいう顔?」
「寂しくて仕方ないって顔さ。だがもうそんな顔にはさせんぞ。俺がずっと傍にいるからな」
ちゅ、と唇にキスをしたオルバはそのままAを引き寄せた。
Aは抵抗せずオルバに体を預ける。
「僕もずっとオルバの傍にいるよ」
ぽかぽかと温かくなる心にふっと笑って、また穏やかな一日が過ぎていった。
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ルティン - はい!応援しています!また読みに来ますね! (2021年8月3日 18時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです!!この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます!これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします! (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい!もう3回も読み返しています…!しかも期間を空けて!何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます!!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました! (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか?...神作者じゃないですか!?貴方様の小説最高すぎるんですよ?!思わず泣いちゃったじゃないですか!...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年12月7日 8時