検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:36,477 hit

番外編 ページ43

「なぁ、A」

「何?」

今日は休日で仕事も何もない日。オルバと2人でテレビを見ていると、オルバはいつになく真剣な瞳を向けた。

「聞きたかったんだが、Aの願いは何だったんだ?」

ずっと聞けなかったAの願い。人になってからAとの生活が幸せすぎて忘れていたが、あの時のAの願いを聞けていなかった。

「……死んでもずっとオルバといること」

フイっと顔を背けたA。耳が赤くなっているのをオルバは見逃さなかった。恋人として一緒に住むようになってから、たまにAはこうしてデレ爆弾を落としてくる。
そんなAの髪にキスをして、ポンポンと撫でる。

「じゃあ俺と会う前の願いは?」

悪魔がAの元に現れたのは強い願いの力に引っ張られたからだ。つまりオルバと出会う前に願いがあったということ。

「――――最期を、看取ってもらうこと」

ポツリとAが零したのは、両親もいない中病気で倒れ、苦しんでいた時の願い。

「医者とかじゃなくて、知り合った人に最期を看取ってほしかった。看取ってもらうってことは、それなりに親しい証だと思ってる。だがら誰かに看取ってほしかった」

死ぬ前、Aの傍にいたのは悪魔。だからあの時死んでいても、Aの願いは叶っていたのだ。

「でも願ったら、その願いを叶えるために仮初の誰かと仲良くなるでしょ?それに願いは、自分の力で叶えるためにあると思ってる。簡単に叶えたくなかったんだ。自分の力で、どうにかしたかった」

でも今更死ぬ人と仲良くなって嬉しい人はいないだろう。看取ってもらいたい、でもこの願いは叶わなくていい。そう考えた。

「だからいつも、ああいう顔をしていたんだな」

オルバは納得した。
思えばAが悲しそうな顔をする時は、悪魔の契約を解消、つまり離れる時だった。
反対に、「そっか」と笑う時は離れないとわかった時。
なんだ、こんなにヒントが散りばめられているじゃないか。

「ああいう顔?」

「寂しくて仕方ないって顔さ。だがもうそんな顔にはさせんぞ。俺がずっと傍にいるからな」

ちゅ、と唇にキスをしたオルバはそのままAを引き寄せた。
Aは抵抗せずオルバに体を預ける。

「僕もずっとオルバの傍にいるよ」

ぽかぽかと温かくなる心にふっと笑って、また穏やかな一日が過ぎていった。

あとがき→←エピローグ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.4/10 (87 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
68人がお気に入り
設定タグ:悪魔 , 病弱 , BL , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ルティン - はい!応援しています!また読みに来ますね! (2021年8月3日 18時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです!!この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます!これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします! (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい!もう3回も読み返しています…!しかも期間を空けて!何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます!!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました! (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか?...神作者じゃないですか!?貴方様の小説最高すぎるんですよ?!思わず泣いちゃったじゃないですか!...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年12月7日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。