願い 25 ページ26
うわー、なんてタイムリー。
そんなことを考えながらお隣さんを見る。名前が全く思い出せない。杉…がついた名前だったような気がする。
｢あ、えっと……どうも｣
とりあえず挨拶をしておく。ペコっと頭を下げると、彼は安心したように微笑んだ。
｢すみません、突然。倒れるの見てから心配だったんですよ。大丈夫ですか？あ、俺は隣に住んでる上杉っていうんですけど覚えてますかね？最近全然見かけなかったから知らないうちに引っ越したのかなって思ってたんですけど帰ったら玄関で倒れてて驚きましたよ。でも良かったです。入院するほどではなさそうですね。あ、もしかして荷物取りに一時帰宅ですか！？｣
こちらが口を挟む隙もなくどんどん話が進んでいく。マシンガントークだ。とりあえず今の会話で分かったのは名前が上杉ってことと心配してくれていたみたい、ということぐらい。
｢あ……一時帰宅ではないです｣
辛うじて答えられたのはそれだけ。それでも上杉はもう一度、良かったと呟いて落ち着いた。
なんだろう。上杉のこの感じは身近にいたような気が……。
｢全く、いつも止める隙もなく話すから彼女に引かれるんだお前は。いい加減学習した方がいいぞ｣
上杉の生活を壁を通り抜けて見ていたオルバは腕を組んでアドバイスをしていた。何とも可哀想なシーンを見られていたらしい。
あぁ、そうか。上杉はオルバにそっくりだ。
お前も普段こんな感じだからと意味を込め悪魔を睨んでおく。何を勘違いしたのか分からないがオルバは｢ストーカーではないからな！？｣と突っ込んでいた。
｢そういや、何かを渡すんじゃないのか｣
｢あ、そうだった｣
｢どうしました？｣
悪魔との会話は普通の人には聞こえないし見えない。ついつい返事をしてしまったAは言い淀む。
｢わ、渡したいものがあって｣
上杉には待っててもらい寝室にある袋を取りに行く。中身は見てないがほんの少し香る甘い匂いと音が響くのでおそらくクッキーだ。
｢救急車呼んでくれてありがとうございました。あの、これ、お礼です｣
｢えー、いやいいですよ！当たり前のことじゃないですか！大事なくて良かったです｣
にぱっと笑う姿もまるで調子の良いときの悪魔そっくりで。そして自分の中で、こんなにも悪魔が当たり前になっていることに驚いた。
―――――嗚呼、本当に、戻れなくなりそうだ。
気持ちとは裏腹に温かくなってしまう心。胸を押さえたら止まってくれるだろうか。
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ルティン - はい！応援しています！また読みに来ますね！ (2021年8月3日 18時) (
レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです！！この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます！これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします！ (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい！もう3回も読み返しています…！しかも期間を空けて！何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます！！これからも頑張ってくださいね！！ (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます！！泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました！ (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか？...神作者じゃないですか！？貴方様の小説最高すぎるんですよ？！思わず泣いちゃったじゃないですか！...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2019年12月7日 8時
