願い 3 ページ4
朝ご飯を適当に済ませ、粗方の家事をしておく。体が弱いため、外で会社員となるのは難しい。なので家の中で出来る作業をする。所謂、内職と呼ばれるものだ。
「なー、おい。外に出ないのか?」
箱にシールを貼る簡単な作業。ただし少しでも傾いていたらその時点で不良品となる。
「晴れてるだろ!こんなじめじめしたとこよりは絶対外に出た方がいいと思うぞ!」
Aは持ち前の集中力でずっと同じ、シールを綺麗に貼り続けている。他のことを全く気にせず。
「むしろ俺が外に出たい!あの大きい建物は何だ!?あの現代人が持っている薄いやつは!?この世界には知らないものがいっぱいだ!」
そう。このうるさい子供みたいな悪魔のことも気にせずに。
「おーい!外に行こうじゃないか!そのペタペタするやつは後でもいいだろ!」
「――――――――うるさいよ、悪魔。黙って」
ギロリと悪魔を睨み付ける。さっきからこいつのせいで何も集中出来ない。危うくシールがずれてしまうところだった。
「あのね、これが終わったら別の仕事があるの。君みたいに暇じゃないの。……君、勝手に外出ればいいと思うんだけど」
「そんなことしたら帰り道が分からなくなるだろ!俺はお前の願いを叶えるまでどこにも行かないからな!」
何故か得意気な顔で悪魔は言った。
「どこにも行かない、ねぇ……」
はっきり言おう。Aも人間なので、願いはある。ごくごく当たり前の、人間らしい、小さな願いだ。だがその願いは悪魔には絶対教えないし、叶えてもらう気もない。
だから早く諦めて、他の人を探せばいいのに。
そしたら、僕だってこの人生を諦めることが出来るのに。
「そうだ!お前が願えば俺がその仕事をさっと終わらせてやるよ!どうだ?いい条件だろ!」
「これは自分の仕事だから自分でやるよ。それに願いはないし、あっても叶えてほしいなんて思わない」
シール貼りを再開すると悪魔は横で頬を膨らませた。「強情だな…」と呟いている。
「って今の言葉だと、願いはあるけど叶えてほしくないってことか!?そういうことか!?つまり願いは―――――――」
「物の例えだよ」
――あるんじゃないのか、と言おうとしたらAに先手を打たれた。くそ、早いやつだ。
「絶っ対にお前の願いを見つけてやるからな!木崎A!そしたらその願い叶えさせろよ!」
「はいはい。好きにしていいから、とりあえず黙って」
「言ったな!約束だからな!」
本当に子供みたいな悪魔だな。
68人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルティン - はい!応援しています!また読みに来ますね! (2021年8月3日 18時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです!!この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます!これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします! (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい!もう3回も読み返しています…!しかも期間を空けて!何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます!!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました! (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか?...神作者じゃないですか!?貴方様の小説最高すぎるんですよ?!思わず泣いちゃったじゃないですか!...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年12月7日 8時