世界一綺麗な音【宇髄天元】

15音目 ページ18

宇髄side



『この人…………………………誰…………』


「Aっ！！！！」




倒れ込むAを抱えて何度も名前を呼ぶ



気絶しているだけとはわかっていた



"誰"

その言葉が俺の頭をグルグル回る

もしそれが俺に発せられた言葉だったら……

もし本当に忘れてしまっていたら……

今までになかった程の恐怖が俺を襲った





あぁ、そうか

いつの間にか俺の中でAは大切な存在に変わっていたんだ

こんな小さな体で派手に生きてきたこいつに俺はこんなにも……依存していたんだな




「稽古……辛かったなら言えっての……」



Aの頬に手を当てると異様に冷たかった

冬の風で冷えたとかそんな次元じゃない



「……おい、A……？」




「……どうしたの？Aちゃん……」


「……善逸」


走っている途中だろうに、俺が騒いだせいで善逸が心配そうに駆け寄ってきた





「おい善逸、こいつは一体どういう事だ……？」

「お、おぉ、俺にわかるわけないじゃないですかァァァ！！！

え？え？なんで、え？

………………何があってこう……


なんで涙が、凍ってるの……？」



いつの間にかAの頬を伝っていた涙は氷って、細く白い煙を出していた


いや、涙だけじゃない


冷えたAの体全体的から出ていた




「善逸、胡蝶呼んでこい……

烏でもいいから飛ばせ

今すぐにだ」

「わかった！！」





Aに触れていた手が冷えて痛む

こりゃ……どうなってんだ……？？？？

着ていた羽織をAに掛けて、凍らないように抱きしめる




縁側……

夏なんだから縁側に居りゃあ溶けるか……？？



「須磨！！今すぐお湯もって来てくれ

40から50℃くらいのお湯だ

人体に影響が無いくらいの！！」



遠くの部屋から

はーい！

須磨の元気な声が聞こえてくる



ーーー




「天元様ー、持ってきましたよ！お湯」





須磨が持っていたのは湯のみ1杯のお湯



「馬鹿野郎……それは飲む用だ……

桶1杯程のお湯を持ってきて欲しかったんだけどよ…………」



「ご、ごめんなさい！てっきり飲むものだと……

今すぐ！！」



俺は地味な湯は飲まねぇよ……



1分も経たぬ内に桶1杯程の湯が来た



「Aちゃん凍っちゃってる……」



地面に桶を置き、Aの足や体にかける



ジュウっと音を立ててAを覆う氷が溶けていくも


湯が直ぐに冷えて凍ってしまう





「どうすりゃいいんだ……っ」



速く来てくれ……胡蝶っ……！

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