掴んで離さない。 ページ17
私の聞きたい事を聞くよりもまず初めに、エンマの説教から始まった。
「A、次から気をつけろよな」
眉を下げて、エンマは私の前で腕を組んで座った。
「あんなに酔って、あんな格好で。あまりにも無防備すぎるぜ?」
「私、あの、…なんでもございません」
エンマに対抗しようと口を開いてはみたが、何も反論できずに、静かに口を閉じた。
「おとも妖怪もAはつけようとしないだろう?危ねぇよ」
「ぁ、えっと……そういえばエンマはなぜ昨日のあんな時間に私の所に…?」
無理矢理話を変えるために、気になっていた事を言った。
「ん?あぁ…俺か?」
エンマは私をチラリと見た後、プイッと顔を背けた。
「たまたま仕事が終わって暇だったからAの所に向かっただけだ」
「そうなんだ。お仕事、お疲れ様です」
「ん」
エンマは柔らかく目を細め、微笑むものだから、ドキッとした。
あぁ、本当に、あなたって妖怪は……。
「そういえば…私、昨日お風呂とかは……」
「…ん?あぁ」
「えっと自分で入ってましたか?」
「……あぁ」
謎の間があった気がする。
え、まさか…エンマが…
「…安心しろ。俺じゃない。ここで働く女性妖怪だ。気にしなくていい……」
女性妖怪だ、と言われてもホッとはしない。
恥ずかしい。だけど、俺です。と言われるよりはマシだなと思ってしまった。
俺が入れた、なんて言われてたらきっと窓から飛び降りていたに違いない。
***
「エンマ、昨夜は本当にありがとう」
「次からは気をつけろよ」
「うん」
エンマと朝食を終え、エンマはまた新たな仕事があるみたいなので私は帰ることにした。
私は断ったが、エンマには、屋敷前にあるうんがい鏡まで送ってもらってしまった。
「伝えそびれていたんだが…Aの昨日の浴衣姿…その、すげぇ…」
「え?」
「……好きだ」
好き…?
ブワッと勢いよく顔が熱くなる。
別れ際になんて事を言うのだろうか!
「え、あ!ありがとう!!」
「よく似合っていた」
「…ありがとう…!!えっと、それじゃあ!!」
エンマの顔なんて見れない。急いで背を向けて、うんがい鏡に飛び込んだ。
そして、家に入った途端、座り込んだ。
エンマ、エンマ…あぁ、本当に。
両手で顔を覆い、私はため息がこぼれた。
本当にずるい。
私が忘れようとすればするほど、彼は私を掴んで離してはくれないみたいだ。
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岸 - yuiさん» yui様、好きと言っていただけて、こちらもきゅんきゅんしております( ´ ▽ ` )これから、もっとキュンキュンさせられるように頑張りますね!コメントありがとうございます(^^) (2022年8月4日 20時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
岸 - GHJさん» GHJ様、素敵なコメントをありがとうございます!返信が途方もなく遅くなってしまい、申し訳ございません…!これから再開していきますので、よろしくお願いします(*^^*) (2022年8月4日 20時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
岸 - 花音さん» 花音様、お返事が遅くなってしまい申し訳ございません。そう言っていただけて光栄です(^^)またぼちぼち再開していきますので、よろしくお願いします! (2022年8月4日 20時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
yui - めっっっちゃ好きですこの話...凄いキュンキュンして、一人で悶えてます...... 執筆お疲れ様でした♪ (2022年1月22日 15時) (レス) @page20 id: 091807da6e (このIDを非表示/違反報告)
GHJ - 読んでいると楽しくなりすぎてもう全て読み終わっちゃいました><続き楽しみにしてます! (2021年12月5日 20時) (レス) @page20 id: 0fb369d062 (このIDを非表示/違反報告)
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