オカンと覆面男の幼なじみは紅一点【最/俺】 (ページ2)

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まだ十月だというのに、風が冷たく吹きつけてくる。
たった数秒の距離でも何か羽織ってくるべきだったと後悔した。

インターホンを鳴らすと、幼馴染みのお母さんが顔を出す。

「Aちゃん、いらっしゃい。どうしたの？」
「こんにちは。これ、祖父が送ってきた野菜なんですけどお裾分けです」
「まあ、いつもありがとう！」
おばさんの顔が、パァっと明るくなる。

「こーちゃん、いますか？勉強教える約束してて、さっきメールしたんですけど帰ってこなくて。」
「あら、そうなの？部屋にいると思うわ。あ、でもお友達が来てるんだけど…」

予想外の言葉に思わず、えっ、と言ってしまう。
ならば出直そうか、と考えていたが。

「行っても良いんじゃないかしら？どうせ遊んでるだけだろうし」
そう言っておばさんは、私を家にあげてくれた。

「じゃあついでに一緒に遊んできます」
「ふふ、程々にね～」

おばさんと廊下で別れて、二階にある幼馴染みの部屋に向かう。
結構大きめの声で騒いでるのが、階段からでもよくわかる。

(人との約束すっぽかしておいて何やってんだ、あいつは)
今更約束を忘れていたぐらいで怒るような仲ではないのだが、笑い声を聞いて流石に怒りがこみ上げてきた。

いつもの事だが、ノックもせず部屋のドアを開けた。
「ちょっとこーちゃん、携帯見てる？」
「あっ、ばっ、A、今入ってくんな」
「え、女？」

幼馴染みの焦る声と聞き覚えがある低音と緊迫したBGMが一気に耳に入ってくる。
見慣れた部屋と驚いている幼馴染みとクラスメイトと机の上に置かれたPCとマイクが目に飛び込んできた。

BGMが途切れ、代わりにGAME OVERの文字がPCの画面上に映し出される。
五感が感じ取った情報量が多すぎて、怒る準備をしていたはずなのに、思わずフリーズしてしまった。

「あー、ほらぁ…お前が入ってくるからぁ…」
不服そうな幼馴染みの声が聞こえたが、混乱する頭はちゃんと受け付けてくれず、謝罪の代わりにおかしなことを言ってしまった。

「…どういう状況？」

「…つまり、こーちゃんは清瀬くんとゲームの実況をして、それをネット上に上げてるのね？」
「はい、そういうこと、です…」
こーちゃんは、どうやら私との約束をすっかり忘れていたらしかった。彼は今、私の前で正座をして反省モードに入っている。
クラスメイト、もとい清瀬くんは、そんな私たちを見て爆笑していた。

何だ、このカオスな状況は。