病室に咲く花に甘いキスを。【名前変換オリジナル】

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「花＿＿...？」


え、なんで？

なんでベッドが片付けられてんだ？
なんであのいい香りがしないんだ？

急いで廊下に出てネームプレートを確認する。



真っ白だった……。


「嘘…だろ？」


先週はちゃんといたじゃないか。

まさか、そんな
嫌なことばかり頭に浮かんでくる。

真っ白なネームプレートと
綺麗に片付けられた病室を交互に眺める。

口が渇いて声が出ない。
足がすくんで動けない。


「どうしましたか？」


後ろから聞きなれた、
明るいよく通る声が聞こえた。

花を担当していた看護士の森安さんだ。


「もしかして、伊藤さんのこと？」


少しトーンを落とした声でたずねてくる。

なんだよ……。


「あの子、次あなたが来る日を
　 とっても楽しみにしてたのよ。」


少しうつむきながら暗い表情で言う。

だから、なんなんだよ。


「ちょっと、容態が急に悪化してね……」

「……っ!!」


黙れ。
喋るな。


「私たちも少しでも延びるように最善をつくしたんだけど、」




うるさい止まれ全部消えろ。

今は、聞きたくない......。






「つい昨日ね、いってしまったの……」


胸の奥がジンッと熱くなるのが分かった。

視界が、少しずつぼやけていく。


「ごめんなさい、すぐ連絡すればよかったんだけど」

「もう、いいです。」


やっとの思いでそれだけ言うと
俺は廊下を走った。

「ちょっと待って!!」と聞こえた気がしたが
今はとにかくその場を離れたくて
振り向きもせずとにかく走った。


「なんでだよ、なんでだよっ……。」


いつどこで誰が
廊下を走っちゃいけないなんてルールをつくったんだろう。

看護士や患者から非難の目をむけられたが
そんなの今は関係ない。

気付けば病院を出ていて
よく知らない川沿いの道を歩いていた。


「なんでだよ!!!!」


俺の声はうるさいセミの鳴き声にかき消され
自分の頭の中にエコーが虚しく残るだけだった。

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