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ラウ「あのね、A、誰かに突き飛ばされたんだ」
俺「は？」
次の日のリハ。
まだ俺と阿部ちゃん、ラウールしか来ていない楽屋で、ぽつりと呟かれたその言葉に耳を疑った。
俺「誰に」
ラウ「み、見てないんだけど、ドンって音がした後に、Aが落ちたから」
阿部「目黒、落ち着いて」
自分でも無意識に、ラウールに詰め寄ってしまっていて、阿部ちゃんに止められる。
俺「でも、」
阿部「それは俺らの出る幕じゃないよ。事務所に伝えて、大人にどうにかしてもらおう」
俺「…でも、許せない」
頑張ってきた彼女を見てきたから。
その頑張りを、他人の悪意に奪われてしまうなんて。
行き場の無い怒りに、拳を握りしめる。
阿部「目黒は目黒の出来ることをやって。それで朝比奈ちゃんを安心させてあげようよ」
俺「俺の出来ること…」
そう言うと阿部ちゃんは、体育座りするラウールに視線を向けた。
ラウールは、朝比奈さんが舞台に出演できない事を知ってから、かなり落ち込んでいた。
朝比奈さんとラウールは仲が良いから、特にショックが大きかったんだろう。
ラウ「俺、側にいたのにAの事助けられなかった」
阿部「それはラウールのせいじゃないよ、絶対に」
そして怪我をした時に居合わせた分、俺がラウールの立場でも、自分を責めてしまっていたかもしれない。
でもそれじゃ、悪循環だ。
俺「お前に出来ることは、朝比奈さんの分まで頑張る事だろ？」
ラウ「…うん」
色々な思いを飲み込んで、深く息を吐く。
ラウールの肩に手を置くと、泣きそうな顔で俺を見上げ、小さく頷いた。
ラウ「新曲のAの歌割り、僕に歌わせてください」
演出家さんが到着すると、すぐに直談判に向かったラウール。
Aが帰ってきた時に最高の状態で渡せるように、そう言ったラウの顔は何だか急に大人っぽく見えた。
渡辺「え、やっぱ付き合ってる？」
ラウ「だから付き合ってな…」
ジェ「え！付き合ってんの！？」
高地「まじで！」
田中「ラウール、おまっ、ふざけんな！」
森本「ラウールも隅に置けないな〜」
京本「そっちはグループ内恋愛オッケーなんだね」
松村「お前ら落ち着けよ。で、どっちから？」
ラウ「付き合ってません！！！」
顔を真っ赤にさせて怒るラウール。
うん、まだまだ可愛いラウのままだ。
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作者名：うさみ
| 作成日時：2023年7月8日 14時
