イチバンボシ。 (ページ19)

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俺「何してんの？」

興味が湧いた俺が横から覗き込むと、びっしりと字が書き込まれていた。

朝比奈「今日の反省点。忘れないようにメモして、帰ってから復習しようかなって」

俺「帰ってから？」

朝比奈「はい」

俺「明日昼から最終リハやろ？」

朝比奈「それまでに完璧にしておきたいんで」

俺「あの、もう２１時過ぎてんで？」

朝比奈「あ、本当だ。早く帰らないと」

そう言ってバタバタと帰り支度をする朝比奈ちゃん。

朝比奈「じゃ、お疲れ様です」

俺「待って。俺も一緒帰る」

ノートを胸に抱えて頭を下げる彼女を引き留め、鞄を背負って立ち上がった。

俺「え！寝てへんの！？」

朝比奈「へへ、緊張しちゃって」

帰り道。

よくよく聞けば、昨日は緊張して寝れなかったうえに、朝まで振りの確認をしていたとか。

だからフラフラ、ボーッとしとったんや。

俺「朝比奈ちゃん」

朝比奈「はい？」

足を止めた俺を不思議そうに見つめる彼女。

俺はきょろきょろとし手を上げて、タクシーを止めた。

俺「今日はもう帰って寝なさい！」

朝比奈「え、でも」

俺「明日、ちょっと早く来て一緒に確認しよ！だから今日は寝て！」

朝比奈「えぇ、でも」

そんな彼女をタクシーに押し込む。

俺「約束な！」

そう言って一万円札を握らせてドアを閉めた。

驚いたようにタクシーの中からこちらを見る朝比奈ちゃん。

我ながら先輩風吹かせてしまったとは思うけど、駅から一人で帰すのも心配やったし。

…一万円はイタイけど。

可愛い後輩の為や。

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