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HS｢Aってさ、どれくらい日本に置いてきたんだろうな」
こいつはいきなり何を言うんだと思った。
もうほとんど空になったペットボトルをほぼ真上に傾けて、“ほとんど”を“完全”にしたスニョンが随分と真面目な顔で自分のことを見つめている。
WN｢置いてきた？」
HS｢好きなものとか、大切なものとか。日本にしかないものの方が絶対多いだろ」
WN｢…まぁ、確かに」
HS｢この前Aに聞いたんだよ。住んでた家とか通ってた学校の話とか色々さ…それで、なんか」
WN｢なんか、なに？」
HS｢俺たちだって色んなものの代わりにここにいるけど、家に帰ろうと思えばすぐに帰れるし、親にもすぐ電話は掛けられるだろ？でも、Aはそれも難しいんだなって」
HS｢時々、Aが電話持ってどっか行くの見るけど、話してはないんだよ。相手のこととか考えて掛けられないのかなあいつ」
うーん、と細い目を苦しげに細めてスニョンが言う。
同級生たちの中でも大人びて見えるAのことだ。色々考えている中の“色々”に一体どんなことが含まれているのかなんて分からない。
困るも、苦しいも。寂しいとかも。Aは中々口にしない。
HS｢あ、A」
｢…ん？」
HS｢今年の秋夕もスンチョリヒョンのとこ？」
｢あぁ、今年は」
HS｢たまにはクォン家にしてもいいんだぞー」
｢いや、今年はウォヌのところに行くから」
HS｢え…え！？なにウォヌ抜け駆け！？」
WN｢……何が抜け駆け？」
HS｢だって、てっきり今年もスンチョリヒョンのところだと思ったから誘わなかったのに！」
さっきとは打って変わってスニョンの目がバチっと開く。
その表情に思わず笑っていれば、｢来年はうちにしよう。な？」ってスニョンがAの両肩を勢いよく掴んで揺らしていた。
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作者名：柊
| 作成日時：2023年1月29日 9時
