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WN｢…何してんの」
｢あれ、ウォヌ」
WN｢あれ、じゃないから。何してんの？」
｢転んだ」
Aを見つけたのは、家から出て１０分くらい歩いたところにある河川敷だった。少し斜面になっているそこで尻餅をついたように座り込んでいる。
自分の顔を見ても特に驚いた様子もなく、ただ力の抜けた足を広げていた。
WN｢外出るなら言ってくれればよかったのに」
｢言おうとしたけど、いなかったから」
WN｢風呂掃除してたんだよ」
｢ああ、ごめん。手伝えばよかった」
WN｢いや、それは…いいんだけど」
はぁ、と１つ息を吐けば、Aが不思議そうな表情で自分の顔を下から見上げた。それで「なんで疲れてるの」なんて言うんだから、見て分からないのかと一瞬考える。
探してたからだよ。
どこに行ったんだって、心配になって探したから。
WN｢あのさ、A」
｢…ん？」
WN｢ああいう風に構われるのもしかして嫌だった？」
座り込んでいるAに手を伸ばして、掴んだ手を引く。立ち上がったAとの目の高さは少し違っていたけれど、その目がぱちりと瞬くのはしっかりと見えた。
驚いたような、そんな顔で、｢少し懐かしかっただけで、全然そういうことじゃないよ」と視線を下げる。
｢ただ、ほら」
WN｢なに？」
｢今のウォヌはなるべくして今のウォヌになったんだなと思って」
WN｢…なんて？」
｢なんか、あそこはウォヌの家なんだなって」
WN｢なにそれ」
｢そのままの意味」
そんなの分かるけど。
言葉の意味もあの場所が自分の家だってことも当たり前に分かっているけれど、それでもやっぱり“よく分からない”ってそんな感情が頭を埋めようとしてくるのは、一体どういうことなんだろうか。
最近、ずっとそうだ。
Aがうちに来ると決まったときも、ヒョンと気まずいと聞いたときも。今朝も、今も。
ああ、もしかしたら、その手元に落ちる視線のせいかもしれない。
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作者名：柊
| 作成日時：2023年1月29日 9時
