[wrwrd]青に溶ける (ページ33)

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書記長室。何時もの通り、其処に黙々と作業を熟す書記長に、報告書を渡す。

我が上司の事を訊かれたので、まあ包み隠さず答えた。相変わらずまあ、隠れていらっしゃいますよ。そろそろ缶詰にしますけど。

「大先生は相変わらずか……ホンマすまんな……」

「いえ、私の仕事です、書記長の憂われる事では」

二人して焦点の合わない目で互いの顔を見て、小さく苦笑した。互いに鬱様の事では、苦労している。

「そう言や大先生から聞いた、有休願の」

「嗚呼、はい」

隠す事でも無いし、話が通る事は知って居た事だから、頷いた。

「済みません、身勝手な都合ですが」

「否、気にする事ちゃうよ。基本有休とか無かったかのように働いて呉れ取るし」

其れ、多分ブーメランです。
貴方の方は有休どころか休日返上ですよ、書記長。

心の中でそっと労いながら、「恐縮です」と頭を下げた。「書記長には及びませんよ」

其の言葉に苦笑を見せ、書記長は書類をそっと脇にやりながら、

「別に答えたなかったら良いんやけど、相当不躾な質問やし」

と遠慮がちに切り出した。発言に気を使って、大変だろう。他人事の様に思う。構いませんよと肯いた。

「何時もこの時期に……いや、この日だけは取ったりするんは、……」

.

.

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「………はい。流石でいらっしゃいます」

書記長は酷く申し訳なさそうな顔をした。興味本位だったのか、確信を持った質問だっただろう、彼にとっては、恐らくだが。

「……いや、すまん。ほんまに野暮な質問やった」

「いいえ。私にこの地位を与えて下さるにあたって、私の事も調べられていることは考えずとも判って居ましたから」

全ての素性を調べ上げたのだから、そりゃあ、解らない筈も無いだろう。

「それに、その理由の欄の記入も、不適切だと言われるとその通りでしかないので」

実際、こうとしか言われないので何とも言えないが。そんなプライベートな計画を書いても困るので概要にすると、如何も変な感じになってしまう。

「否、けどほんまに不躾過ぎた」

何度も謝るので、此方も申し訳なる程だった。兎に角この謝罪大会を鎮め、空気を換える様に書記長は小さく息を吐いた。

「まあ、あれや。その間大先生は俺が面倒みるから」

そう言った書記長の眼は据わって居た。持ってすらいないのに剣の像が見える。此処に居たら確実に上司は顔を引き攣らせるだろう。

其の一日だけとは言え、可哀想にと心で合掌した。