[wrwrd]青に溶ける (ページ25)

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「資料お持ちしました」

「嗚呼、其処置いといて」

普段の比にはならない程に仕事に没頭する我が上司は、其の儘僧居てくれと思う程真面目だ。一寸死にかけているのがあれだが、まあ、未だ大丈夫だろう。

灰皿の煙草をそろそろ回収すべきか、と思案しつつ、資料を置き、こんな時にも収まらない雑務を熟しつつも、案件の方のサポートに回っている。

無言で執務室で延々と仕事をし続けている私達を見てか、「心無い」と言われ続けているコネシマ様には、「余り根詰めすぎるなよ」と言うお言葉を頂いた。

根は詰めないにしても、早急に進めなければいけない案件であることには変わりはない。鬱様の動きを見て勿論休憩はさせるし無理はさせないが、一寸は私達も無理をしなければ目標に到達はしないだろう。

「Aちゃん、一寸今からシッマの所行って来るから、之眼通してから第二補佐官の方に廻して」

「畏まりました」

コネシマ様の所で、話を少しすると言う事か。恐らく彼の所で一服位はしろと勧められるだろう。と言う事は、言いつけられたことが終わってからお茶の用意をしておこう。其れ位がいい塩梅の筈だ。

書類を繰りつつ、誤字脱字を調べ、頭を内容に入れて行く。嗚呼、第二補佐官の方から、あちらの課に引き渡すのか、と思いながら我が上司のサインと、総統閣下のサインが書かれた紙をいつもより丁寧に捲った。

一日が速い。

資料から目を離し窓を見ると、もう日が天頂から落ち始めて居る事に気が付いた。

少し眉間を解してから、御言葉通り第二補佐官に書類を渡し、席を立つ。何時もの茶葉に、嗚呼、そう言えば、サブレがあったっけ。一寸出しておこう。

自分の休憩にもなるお茶の準備をしていると、疲れ気味の我が上司が扉を少し無造作に開けて入って来た。話をして来たのだろう。

「……アレ、其れって」

鬱様も、皿に並べたサブレの存在に気が付いたのだろう。きょとんとした瞳が妙に子供みたいで、変な感じだ。

「はい、御用達のお店のサブレです。先日ショッピ様に余ったからと頂きまして」

ショッピくんが？へェ、と一寸首を傾げ乍らサブレを見詰る。仕草の一つ一つが、幼児退行して居るみたいだ。

「ン、美味しい。相変わらずやな、此処」

さくッ、と心地いい音。頬を緩ませる鬱様の目の前に、紅茶を入れたカップを届ける。

「ホンマ、吃驚する程何時もナイスタイミングやで」

嬉しそうに笑う幹部に、私も微笑を零した。