[wrwrd]青に溶ける (ページ22)

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「ほ、本気か！？」

「私が正気を失っているように見えますか？」

え、否、と、書記長はしどろもどろになる。彼を通した案件だったにも拘らず本気か、と叫ばれるのは非常に不本意だったので、一寸生意気に返してしまった。いけないいけない。

「ま、マジで言うてる？ Aちゃん」

はい、と肯く。増々絶望に染まっていく表情は、一寸笑えるな、と此の場に似つかわしくない事を思って居ると、「マジでグルさんに遠慮せんでもええんで……？」とおずおずと書記長が言い出す。

余程彼の罪悪感を煽って居るらしいと思いつつも、「ま、前例のない事なので成功に導けるかどうかと言う処に言及はしないで頂きたいのですが」と付け足す。

「総統閣下の命令は絶対。其れに態々こちらの、しかもこの時季に被せて来たと言う事は、『そうするメリット』が存在すると、総統閣下が判断されたからでしょうし」

書記長は、まあ、そうなんやけど、とやっぱり引け腰だ。まあ仕方のない事だと思う。

抑も、あの幹部の中で総統閣下の右腕と称賛を浴び続ける書記長が、この案件のメリットを理解して居ない筈がないのだから。だとしても駄目元だとしたのは彼が真面目だからだ。

まあもっと妙な云い方をすれば、「真面だから」だ。

そして、此処に就任する幹部も、其れを纏め上げる総統も、全員が全員真面でなければ話にならないが、「真面な人間ばかりでも話にならない」のである。

諸所を支える補佐官にしても、其れは同様の事だった。そう言う事だ。

「人事の部署がこの案件に『介入』と言う形を取らないのは、恐らく根本的システムの解決を総統閣下がお求めになったからでしょう」

人事の入れ替わりの際の手続きやすべきことと、この案件で手を回すべきことを考えて、頭の中で並行の計算をしてみる。
理論的には可能だろう。実際は不確定要素がたくさんあるので、如何とも言えない感じだ。

と言う事は、エーミール様辺りも含め、先程出てきた皆様の部署の御助力を得つつの作業と言う事になるだろう。だが、主導は此方と言う事だ。

「一つ確認させてください。この案件、もしそうだとするならエーミール様の部署でなくても大丈夫なのですか？」

「……みたいやな。恐らく人事の辺りからの解決から、エーミールに介入させるつもりやと思う」

だろうな。
予想通りの返答に頷きながら、解りました、と肯いた。

つぅと、背中に汗が流れる。

さて、どう転ぶか。

＊＊

わかめ