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とある非番の昼下がりにて。
「鬱様のところで補佐してるんでしょ? どんな感じ?」
「相変わらず下らない話が好きやね、エレーナ」
テンションの高い友人は、ふわっふわの髪を揺らしてパフェを口に運んだ。
「良いでしょー? 全然今まで浮いた噂がなかったAが、あの鬱様の第一補佐なんだから!」
恋愛もへったくれも無いがな。心の中で呟きつつ、カプチーノを口に含む。ほろりとした苦みが口の中で心地良く広がっていく。
「仕事の態度は時々絞め殺したくなるよ。やけど好い上司」
そうだ、尊敬している。
巧く人の逃げ場を作ったり、仲を取り持ったり。巧く気を使えて、人当たり良く優しさを振りまける。
私には一生そんな芸当出来ないだろう、と、彼がそうやって場を収めるのを見るたび思う。
「まーた事務的な褒め方をする」
『そういう話』が三度の飯より好きな彼女は、唇を尖らせた。何時か適当な恋仲の人間を付け回して出羽亀でもするかもしれない。
「男性として好きだよって言って欲しいん?」
「否、其れAが云うと気持ち悪い」
バッサリと斬る友人は、私に似ているのか似て居ないのか。類は友を呼ぶと言うのが私の周りではよく起こるらしいが、彼女ばかりは判らない。
「じゃ、何期待したん」
「ンー、解んない」
話すために話すような実の無い会話は、一気に疲労感を煽る。何故此奴と友人なんてやって居られるのだろうと自分でも不思議だが、其れを差し引いた魅力があるからだとしか言えない。
「でも何かさーあ、最近こう、恋愛話が足りない! 何かない? 面白いの」
「そんな話題に一々興味持ってないし」
もー! と頬を膨らませる彼女は、何処から如何見ても可憐だ。恋愛話にのみ発揮するその野次馬根性さえなければ、完璧に可愛らしい女の子だろうに。
嗚呼、否、此奴は案外人に毒を吐くからな。そんな事は無いかもしれない。
「鬱様の所なんて、恋愛話がごろごろ転がってそうじゃない」
「良いん? 女が適当に上司に引っ掛けられて棄てられる話や聴きたいの」
恋愛話と言うよりは、一寸違う方に走りそうだ。丁度そこを通った店員にカプチーノの御代りを注文する。
「ンー……じゃさ、何かAが鬱様にされた事とか無いの?」
「はっ?」
面食らった。恋愛感情は無いと遠回しに伝えた心算だったのだが。
「だってェ、女癖の悪さで有名の鬱様が、あんたに仕掛けない訳ないじゃない」
悪い笑顔で笑う。
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かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年8月20日 18時) (レス) id: fb24f34b5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥彼方 | 作成日時:2019年8月20日 18時