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｢ふあ、眠い……｣
｢もうちょっとだから、我慢してろって｣
そう、本当にあとちょっと。今は午前零時五分前。日付越えるまで起きてられないとか、ガキじゃないんだからさ、こいつ普段は余裕でオールとかしてるだろ。
いつもだったらくそつまらないから絶対観ないようなテレビも、こんな雰囲気だとなんとなく許せてしまう。
そこかしこに、日常と非日常がごちゃごちゃに混ざりあった心地いい空間が溢れているから、こんなワガママ王子と一緒でも楽しく感じる。
多分、零時になると同時にあけおめLINEが大量に送られてくるんだろう。静かに過ごしたいから携帯をマナーモードにする、目の前に不用心に転がっている携帯も同様に。
｢ほら起きろ！ 十二時過ぎたら寝ていいんだから！｣
｢っ、うー……｣
｢あと3分だぞ、今年終わる前にやっておきたいことはないのか？｣
｢あー、やる……｣
がばっ、と音を立てて炬燵から脱出。すごい男気。
そして何故かぐるぐるとストレッチ。
｢……なにすんだ｣
｢へへえ、新しい年になるとき、俺は地球上にいない！｣
｢馬鹿なことやらないで座れよ。どうせジャンプとかするんだろ、もっと身になることをやれって｣
｢う、んー、えーと……お前に感謝を伝える、とか？｣
は？
｢いっつも危なっかしい俺、ちゃんと見ててくれてるし。一緒にいて楽しいし。そばはうまいし。明日のおせち期待してる｣
……おそらく感動的なことを言っているんだろうけど、ラスト二文で台無しだ。感謝って言ったんじゃないのかよ。
こいつらしいか。ふ、と頬を歪めたのをめざとく見つけられる。
｢あー！ 俺がせっかく、一世一代の大告白をしたっていうのになんで笑うんだよ！｣
｢そんな雰囲気じゃないだろ、一世一代の大告白はプロポーズまで取っておけ｣
｢それもそうだな！ お、あと一分。｣
すっかり眠気も醒めたのか、わくわくとカウントダウンをしている。
40、39、38。
今年もいろいろあったな、年の半分以上はこいつといた気がする。毎日のように笑わせてきたな。
30、29、28。
友達が多くない俺と、いつも一緒にいてくれるの、感謝してるんだけどな。
25、24、23。
｢こちらこそ、ありがとな｣
｢ん？ なんか言ったかー？｣
｢なんでもない｣
5、4、3、2、1。
テレビの左上に、0が3つ並んだ。
｢あけまして、おめでとう。｣
どちらからともなく、お互いにそう伝えた。
今年も、よろしくな。
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