ストーブの前の約束 ページ2
＊
私はストーブが苦手である。
それは十数年前に遡るのだが、雪のとある日、いそいそと幼稚園へ行く準備をする私。
目の前には暖かいストーブ。
着替えも準備も終わり、母が準備できるのを待っていた。
ストーブの横に座って。
母が私を呼んだのと腕に感じた熱さと、ジュッ、と焼ける音がしたのはほぼ同時だった。
「熱っ！！！」
私の腕は火傷していた。5センチにも及ばない火傷だった。
しかし、その時の私は酷くストーブが恐ろしく感じた。
それから私はストーブが怖い。
友達には「乾燥するから嫌だ」と言っている。
ストーブの上にヤカンを置かれると凄く困る。
私はこのままストーブを嫌って生きていくのだと思っていた。
しかしそれは、地域の集まりごとで出会った大学生の彼によって変わることになった。
彼は大学生だとというのに、周りの目も気にせず公民館の部屋にあるストーブの前に猫のように丸くなっていた。
「はへぇ…あったけぇ…」
アホみたいな面で、アホみたいに絆された声出して、正真正銘のアホだと思っていた。
彼はずっとこちらを見ている私に気づいたらしく、愛想の良さそうな笑顔で
「こんにちは、僕がここを陣取ってたら困りますよね…はは、すみません 」
そして申し訳なさそうに眉を下げながら言った。
不覚にも私はその態度にきゅんと来てしまった。
「いっ、いいえ、滅相もごごございませぬ！？
どどど、どうぞごくつろぎください！」
あぁ、なんてことだ。やってしまった。
すると彼はクスリと笑って少し横にずれてくれて、隣をポンポンと手で叩いた。
……………隣にこいということか。
恐る恐る隣に座る。
「……………こわいの？」
ストーブが。と、それの前に行くことを躊躇っていたのを感じたのか、心配されるほどまで私の表情が酷かったのかは分からない。
でも、彼にはいいと思った。
友達にも話したことがなかった私のトラウマを話しても。
うんうん、相槌を打ちながらと真剣に聞いてくれる彼は根っからのお人良しだと思った。
そして何を思ったのか
「じゃあ、僕が手伝ってあげるさ。ストーブ恐怖症克服！」
片手を掲げ、子供みたいなことを言い出して、私は吹き出してしまった。
酷いぞー、と恥じらいながら拗ねる彼を慰めながら、
私はこの人となら克服できるのかもな、なんてちょっと期待してみた。
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