9日目 ページ11
「行けーッ!!」
……時間……5秒でも稼げれば十分な方だな。
何故、勝ち目が無い勝負に挑もうとするのか。
彼奴に飛びかかる輩を見て、ひたすらに疑問が浮かぶ。
それは慢心からか、恐怖からか、欲求からか、それとも他の感情からか。
……どちらにせよ、心を持たないノーバディには___記憶すら持たないオレの様な者には解らないんだと何となく思えた。
「……そんな事を考えてる場合ではないな」
其奴らの奮闘を横目に見ながらもオレは闇の回廊を開き、素早く中へと入る。
こうしてオレは撤退する事が出来た。
……呆気ないな。
まあ、良い結果には変わらない。ロクサスも無事に走っている事だろうから。
「……まだ、着いてはいないだろうな」
先程の通路でも数時間使ったんだ。此処でそんなすぐに終わりが見える事は無いだろう。
……場所を割り出し、行ってしまおうか。
「何だかズルをしている気分だ」
大凡の場所を割り出し、其処に回廊を繋げる。
そして、回廊を出たその場所は……
「……推測通りだ」
第二次試験会場の扉の前だった。
……オレはこういったものが得意なんだな。自分でも始めて知った。
まあ、後は待つだけ___
「……!」
木陰で休もうと扉から背を向けた途端、その重厚な扉が音を立てて開いた。
「ちょっと、予定より早すぎない……ってあれ?」
扉から顔を覗かせて此方を見る女の人と目が合った。
「アンタって受験生?」
「そうだが」
オレの答えに、その者はオレの顔を見つめる。
「……きゃーっ!かわいい!
今年はこんなかわいい子が参加しているのねっ! 」
そう言った女はオレに勢い良く飛び付いて来た。
その圧迫感から少々苦しいながらに思う。
……可愛い?
「やめてくれ。オレはそんなものではない」
ラクシーヌも同じ様な事を言ってくるが……訳が解らない。
「んー? 誰、その子?」
扉の奥には腹の音を鳴らしている巨漢の男もいた。
「受験生だって! この子、何故だかサトツより早くここに来ちゃったらしいのよ」
「へー……今年の新人は凄いね」
……その発言は……この者達は第二次試験の試験官か。
「ねぇ、まだ時間あるし、こっちでゆっくりしていかない?」
輝いた顔をしては、オレに提案をするその人。
「……遠慮しておく。まだ仲間が来ていないんだ」
そう言ってオレは木陰へと足を進め、其処に凭れ掛かる。
その行動で納得して貰えたのか、彼女は少し落ち込んだ様子で扉を閉めた。
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作者名:レフト | 作成日時:2017年5月27日 19時