おかえり ページ42
まふまふside
「まふ〜、今日このあと遊びいかん??」
動画の撮影が終わり、片付けをしていた僕にさかたんがそう声をかけてきた。
僕は申し訳なさそうな表情を作って、顔の前で両手を合わせる。
「あ、ごめん〜…このあとどうしても外せない用事があってさ…」
さかたんは一瞬「なんで?」というような表情を浮かべ、
部屋に飾ってあるカレンダーを見て、「ああ」と声を上げた。
「今日、Aちゃんの…」
「…うん。Aが落ちちゃってから、2年目。」
僕もさかたんと同じようにカレンダーを見上げた。
今日は、『あの日』から、ちょうど2年になる日だ。
カレンダーに表示されている年が、それを余計に実感させてくる。
僕はそっと目を伏せた。
さかたんが、「そっか…早よ目え覚めるとええなあ…」とつぶやいた。
それが、さかたんなりの精一杯の励ましだということは、痛いくらいにわかっていた。
「うん…今日こそ、って言い続けて、2年目だよ…」
どうしてこうもコントロールできないんだ、涙っていうのは。
ぼろぼろとこぼれる涙を拭うこともせず、僕はただ俯く。
「…ホラ〜、泣かんといて!!Aちゃんにそんな顔見せられへんやろ!!」
「…っ、う、ん…っ」
さかたんにバシンと背中をたたかれて、僕はたまらず少し笑顔をこぼす。
…ほんと、さかたんのそーゆーとこには敵わないや。
「…きっと、大丈夫やから。まふの想いは、きっと届く。」
__________
「あら、今日は迷わず来れたのね、真冬くん。」
たまらず顔が熱くなる。
Aの病室が変わってから、何回迷ってべそをかいたことか。
数えていたらきりがなくて虚しくなってやめた。
恥ずかしくて、さりげなく必死にちがう話題を提供する。
「あ、検温…ですか?じゃあ僕一回廊下でまs…」
「あら、大丈夫よ、もう終わったから。」
「あ…そ、そうですか…」
ちょっと残念に思ったのは秘密にしておいてほしい。
Aを見ると、いつもと何ひとつ変わらない様子でねむっていた。
たまらずぽつりと本音をおとす。
「まだ、起きないの?僕もみんなも、2年も待ってるのに」
その言葉が、少しの余韻を残して病室に消えた瞬間のことだった。
握っていたAの左手が、ほんの少しだけ、僕の手を握り返した。
びっくりして、思わずAの顔をはじかれたように見つめた。
____2年ぶりに開かれた瞳と、目があった。
「…まふ…く、ん…?」
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夕焼涙雫(プロフ) - 栗原 真白さん» 面白かったですよいー(*ゝω・*) (2018年9月23日 6時) (レス) id: 76522a65f0 (このIDを非表示/違反報告)
栗原 真白 - 夕焼涙雫さん» ほ、ほんとですか…?!嬉しいです、ありがとです…!! (2018年9月22日 19時) (レス) id: 0170d3c859 (このIDを非表示/違反報告)
栗原 真白 - Canpasuーキャンーさん» ありがとうございます(*>ω<*) (2018年9月22日 19時) (レス) id: 0170d3c859 (このIDを非表示/違反報告)
夕焼涙雫(プロフ) - 完結じゃー!時間がある時(=休日)に読み返そう (2018年9月20日 6時) (レス) id: 76522a65f0 (このIDを非表示/違反報告)
Canpasuーキャンー(プロフ) - 完結(?)お疲れさま!そらるさんの次回作、楽しみにしてるよ! (2018年9月19日 20時) (レス) id: 1cab1691ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:青瀬真白 | 作成日時:2018年6月26日 6時