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*4(躊躇) ページ35

まふまふside


「A!!」 「Aさん!!」

僕とそらるさんが飛び込んだ隣の部屋に、Aと幸助さんはいた。
でも、その姿を見た途端、心臓が猛烈な勢いで痛みを訴えだす。

「…あーあ、見つかっちゃった。なぁんでこうも上手くいかないのかな?」

幸助さんはAを抱きかかえて、クッと息をつめて嗤う。
その笑顔は、これから起こることを心から楽しみにしているように見えた。
隣ではそらるさんが真っ青な顔で幸助を睨みつけてる。

ベランダから差し込む夜の空気。
全開に開かれた窓からは、冷たい風が忍び込んできて、僕の肌を撫でていく。



綺麗に満ちた満月の光を背景に、幸助さんとAはベランダの手すりに立っていた。



「いや、離してっ…!!離して、幸助さんっ…」
「駄目。もう逃がさない。Aを連れてくって言ったよな?相川 真冬」

突然名前を呼ばれて、身体が硬直する。
「水族館のとき」と笑っている幸助さんを見て、あの日の出来事が鮮明にフラッシュバックする。







『Aは、俺が連れていくね。誰の手も届かないところへ、2人』









それがあの日、水族館で僕が聞いた幸助さんの言葉。
それがこの結果だというのか。

「心中って、そういうことだろ?」

幸助さんの、嬉しそうな声が脳内に響く。
鮮明に映し出された記憶の中で、僕はまだ、目の前で今起こっていることが信じられないでいた。

「やっ……嫌……っ、たすけて、まふくん…っ!!」

Aがそう言って手を伸ばす。
その声にハッとして、必死にAへ右手を伸ばすと、その姿がガクンとブレた。

「動くんじゃない。Aがどうなってもいいの?」

幸助さんの足が、手すりからすっと後ろへ動く。
かろうじて手は壁を掴んだままだけど、僕が動けば容赦なくその手を離すんだろう。

それだけは、それだけは阻止しないといけない。

「……Aを返してください」
「やだなぁ、君の言うこと聞くと思う?」

幸助さんの目がすぅっと細くなる。
そして、その瞳がAのほうへ向く。

「ねえ、A。俺は、お前が俺の手で傷ついていくのが嬉しくてたまらなかった。
 お前のその顔が、瞳が、声が、俺を思い出すたびに歪むのが、嬉しいんだ」
「…………は?」

低い声が自分の口から漏れる。
さっきまで僕の中で揺蕩っていた躊躇が、怒りの感情に変わる。



「こうやって今、2人で並んで立っているのも、きっと運命だ」

*5(届いて)→←*3(後悔)



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作品ジャンル:恋愛
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夕焼涙雫(プロフ) - 栗原 真白さん» 面白かったですよいー(*ゝω・*) (2018年9月23日 6時) (レス) id: 76522a65f0 (このIDを非表示/違反報告)
栗原 真白 - 夕焼涙雫さん» ほ、ほんとですか…?!嬉しいです、ありがとです…!! (2018年9月22日 19時) (レス) id: 0170d3c859 (このIDを非表示/違反報告)
栗原 真白 - Canpasuーキャンーさん» ありがとうございます(*>ω<*) (2018年9月22日 19時) (レス) id: 0170d3c859 (このIDを非表示/違反報告)
夕焼涙雫(プロフ) - 完結じゃー!時間がある時(=休日)に読み返そう (2018年9月20日 6時) (レス) id: 76522a65f0 (このIDを非表示/違反報告)
Canpasuーキャンー(プロフ) - 完結(?)お疲れさま!そらるさんの次回作、楽しみにしてるよ! (2018年9月19日 20時) (レス) id: 1cab1691ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:青瀬真白 | 作成日時:2018年6月26日 6時

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