もう、つらい思いなんてさせない。【まふまふ】

出会い ページ1

『お前は黙ってりゃよかったんだよ。都合いいだけでお前なんかほんとは好きじゃない。』

昨日出て行ったあの人の最後の台詞が耳にこびりついて離れない。
なんで、こんなことになっちゃったんだろう。

私が悪かったのかな。

もうすぐ付き合って１年だった。
記念日だから、おしゃれな彼に釣り合うようなきれいなネックレスを買って、渡そうと思っていた、
その矢先。

『ごめん、別れて。』

一瞬何を言われてるか理解できなかった。
お前よりもきれいで従順なひとに出会ったから。そのひとに付き合ってほしいと言われたから。
彼がそう説明する声に、昨日まで向けられていた温かさはみじんも残っていなくて。

どうして。

私は、彼との交際で多くのものを切り捨ててきたのに。
家族や友人の反対をおしきり、彼に心配をかけないようなるべく家にいるよう努めた。
暴力を振るわれても、我慢し続けて。
ほら、見て。体のあちこち、あざだらけ。

不思議と涙は出なくって。

そのかわり、あらゆるものに対するやる気というか意力というか、
そんな類いのものがどこかから抜け落ちていくようだった。

死にたいな。

今までそんな罰当たりみたいなこと、考えたことなかったけど。
今なら、心の底からそう願う。
もう、私の生きる意味が自分でわからないの。
私のすべてだった彼はもういない。

「…死にたいな。」

口から出てしまっていた。
私の家はマンションの12階だから、ベランダから飛び降りちゃえば、きっとすぐ、いける。
私は、ゆっくりとベランダに向かって、手すりに手をかけた。

目の端に、橙色の夕焼けがうつった。
その光が、一段と強くなった気がした。

＊２→

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