手 ページ37
嬉しさのあまり泣き出してしまった私に、折原さんはそっとハンカチを差し出してくれた。
そのハンカチを受け取るか迷っていると、折原さんに「このハンカチを口実にまた会お？」と言われたので、ありがたくハンカチを受け取ることにした。
「落ち着いた？」
『はい…すみません』
「謝らんといて？むしろ嬉しかったで？」
折原さんの言葉の意図が分からず、きょとんと折原さんの顔を見上げると、少し意地悪な顔をした折原さんが立っていた。
「泣くほど、俺の事好きやったってことやろ？」
『っ！！』
図星すぎて、思わず言葉に詰まる。頬どころか顔が真っ赤になっているに違いない。慌てて顔を下に向けようとするも、折原さんに両頬をそっと包まれて下を向く事すらできない。
「可愛い」
甘く蕩けるような囁き声に、また涙が溢れ出しそうになる。慌てて折原さんから借りたハンカチで目元を抑えると、折原さんはクスクスと笑いながら解放してくれた。
「ほな、帰ろうか」
『はい…』
名残惜しさを感じながら歩き出そうとしたら、目の前に差し出される手。その手の意味が分からず固まっていると、折原さんの声が降ってきた。
「手、繋ごうか」
本日何度目かの思考停止に陥った私に痺れを切らし、折原さんは問答無用で手を繋いできた。呆然としたまま、私は折原さんと手を繋ぎながら駅の中へと歩き出したのだった。
コインロッカーからスーツケースを取り出した後もずっと折原さんは手を繋ぎ続けてきた。その大きな手の感触に私はずっとドキドキし続けていた。
「ほんまにここまででええの？」
『はい、今日は姉が迎えに来てくれているので』
今日は私の自宅の最寄り駅で折原さんと別れる。姉が彼氏さんの車で迎えに来てくれるらしい。
「今日は行きも帰りもお迎えつきなんやな」
『あ、ほんとだ…』
「気が付かなかったん？」
『別々に連絡取ってたし、よくある事なので』
「まあ、Aちゃんのお姉さんや舞花ちゃんの気持ちは分かるけどな」
『そうですか…？』
「おん、目離せへんもん」
『確かによく二人からは抜けてるとは言われますけど…』
自分ではそこまで抜けていると思っていないため、首を傾げる事しかできない。一人で唸っていると、折原さんが「そういう所がやで」と小さく笑った。
「Aー」
『あ、お姉ちゃん！』
「お、良かった。ほな、もう行くな」
『はい。今日はありがとうございました』
人混みの中に折原さんの背中が消えるまで、私は見送り続けるのだった。
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紫苑(プロフ) - リリトさん» リリトさん、コメントありがとうございます！ そんな偶然があるんですね？！自分で名前を設定しておきながら驚きました笑 (2020年11月9日 19時) (
レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリト - 漢字は違うけど、本名同じ人おったｗｗ (2020年10月22日 17時) (レス) id: 5c9bfe90e0 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - ひよりんさん» こんばんは。メッセージを返信させて頂きましたので、ご確認頂ければ幸いです。 (2020年8月22日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
ひよりん(プロフ) - こんにちは。メッセージ送らせていただいたので、見ていただければ幸いです。 (2020年8月21日 21時) (レス) id: 222226e292 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - センラさん推しさん» センラさん推しさん、コメントありがとうございます！ 神様だなんて畏れ多いです…！ですがありがとうございます、嬉しいです。 これからも頑張りますね！ (2020年3月18日 22時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2019年11月1日 18時
