検索窓
今日:1 hit、昨日:17 hit、合計:209,141 hit

stage.29 ページ40

(side.???)

大会が終わりオーナーに呼び出され、"願い事"の権利をもらった俺たちは、オーナーが応接室を去った後、暫く今日の出来事を話していた。しかし、オーナーに淹れてもらった紅茶も飲み終わった頃、帰路につく事となった。

「片付けはどうする?」

茶器をそのまま置いて帰るわけにはいかないので、誰かが片付けをしなければいけないが、誰もやろうとしない。数秒間の無言の後、じゃんけんで決着をつける事となった。

「負けた…」

1人だけ負けた俺は、4人分の茶器を片付ける事となった。俺を除いた3人はお気楽な様子で帰って行った。次カジノで会った時、絶対に勝ってやる。



(面倒くさい…)

給湯室は応接室から少し距離がある。だからこそ誰も片付けを積極的にやろう、と言わなかったのだが。

ただ、給湯室は事務室の前を通る。オーナーが一瞬見れるかもしれない、と僅かな期待を抱きながら、事務室の前を通ろうとした時、信じられないような会話が耳に飛び込んできた。

「A、扉はどうする?」
「…ごめん、開けておいてほしい…」
「ん、りょーかい。じゃ、私はここで気楽に座らせてもらうね」
「ごめんね…」
「A、こういう時は感謝の言葉の方が喜ばれるぞ」
「そーそー」
「…そっか、そういう事ならありがとう」

聞こえてきた会話の内容を理解した時、ここ数日モヤモヤしていた疑問が解決した。

(オーナーは、Aさんだったのか)

ある程度予想していた事ではあったが、実際その現実を目の当たりにすると動揺が隠せなくて、俺は忍び足で給湯室へこっそりと向かった。
茶器を片付けても動揺は収まらなくて、俺はふらふらと応接室に戻り、1人ぼんやりとソファーで座って考え耽っていった。



それからどれ位の時間が経ったのだろうか。我に帰った俺はそろそろ家に帰らなければ、と思う反面でここから動きたくない、と思っていた。ちょうどその時、急に扉が開き、彼女が入って来た。

「な、なんで…」

目を丸々と開き、俺をまっすぐ見つめる彼女は言葉を失っていた。絞り出されたか細い声は、たった一言で、でもその一言に全てが集約されていた。驚く彼女と反対に、俺は想像以上に冷静に彼女を観察できた。

(ワンピース、初めて会った時のやつだ)

何と説明すればいいか、眉を下げて苦笑すれば、彼女もそれだけで察してくれた。

「…もう言い逃れはできない、ね」

そう言い切ってソファーに座った彼女の潔さに、俺はうっかり惚れ直してしまうのだった。

分岐します!→←stage.28



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (216 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
525人がお気に入り
設定タグ:歌い手 , 浦島坂田船
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

紫苑(プロフ) - リリさん» ちゃんと変換できたみたいで良かったです! ご不便をおかけして、失礼しましたm(__)m 頑張ります!ありがとうございます! (2019年10月14日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - ちゃんと、名前が出来ていました!名前で呼ばれるのが嬉しいです( ̄∇ ̄*)ゞ次も頑張ってください! (2019年10月13日 18時) (レス) id: 3c3ec4405a (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - リリさん» リリさん、ご指摘ありがとうございます…!こちらの設定ミスです…修正いたしましたので、名前が変換されるはずです! 応援ありがとうございます!頑張ります!!! (2019年10月11日 21時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - 最高です!登場人物の、名前を変える設定で名前を入れても、変えれないのですが……どういうことでしょうか……これからも、頑張ってください! (2019年10月11日 15時) (レス) id: 3c3ec4405a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:紫苑 | 作成日時:2019年10月7日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。