stage.29 ページ40
(side.???)
大会が終わりオーナーに呼び出され、"願い事"の権利をもらった俺たちは、オーナーが応接室を去った後、暫く今日の出来事を話していた。しかし、オーナーに淹れてもらった紅茶も飲み終わった頃、帰路につく事となった。
「片付けはどうする?」
茶器をそのまま置いて帰るわけにはいかないので、誰かが片付けをしなければいけないが、誰もやろうとしない。数秒間の無言の後、じゃんけんで決着をつける事となった。
「負けた…」
1人だけ負けた俺は、4人分の茶器を片付ける事となった。俺を除いた3人はお気楽な様子で帰って行った。次カジノで会った時、絶対に勝ってやる。
(面倒くさい…)
給湯室は応接室から少し距離がある。だからこそ誰も片付けを積極的にやろう、と言わなかったのだが。
ただ、給湯室は事務室の前を通る。オーナーが一瞬見れるかもしれない、と僅かな期待を抱きながら、事務室の前を通ろうとした時、信じられないような会話が耳に飛び込んできた。
「A、扉はどうする?」
「…ごめん、開けておいてほしい…」
「ん、りょーかい。じゃ、私はここで気楽に座らせてもらうね」
「ごめんね…」
「A、こういう時は感謝の言葉の方が喜ばれるぞ」
「そーそー」
「…そっか、そういう事ならありがとう」
聞こえてきた会話の内容を理解した時、ここ数日モヤモヤしていた疑問が解決した。
(オーナーは、Aさんだったのか)
ある程度予想していた事ではあったが、実際その現実を目の当たりにすると動揺が隠せなくて、俺は忍び足で給湯室へこっそりと向かった。
茶器を片付けても動揺は収まらなくて、俺はふらふらと応接室に戻り、1人ぼんやりとソファーで座って考え耽っていった。
それからどれ位の時間が経ったのだろうか。我に帰った俺はそろそろ家に帰らなければ、と思う反面でここから動きたくない、と思っていた。ちょうどその時、急に扉が開き、彼女が入って来た。
「な、なんで…」
目を丸々と開き、俺をまっすぐ見つめる彼女は言葉を失っていた。絞り出されたか細い声は、たった一言で、でもその一言に全てが集約されていた。驚く彼女と反対に、俺は想像以上に冷静に彼女を観察できた。
(ワンピース、初めて会った時のやつだ)
何と説明すればいいか、眉を下げて苦笑すれば、彼女もそれだけで察してくれた。
「…もう言い逃れはできない、ね」
そう言い切ってソファーに座った彼女の潔さに、俺はうっかり惚れ直してしまうのだった。
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紫苑(プロフ) - リリさん» ちゃんと変換できたみたいで良かったです! ご不便をおかけして、失礼しましたm(__)m 頑張ります!ありがとうございます! (2019年10月14日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - ちゃんと、名前が出来ていました!名前で呼ばれるのが嬉しいです( ̄∇ ̄*)ゞ次も頑張ってください! (2019年10月13日 18時) (レス) id: 3c3ec4405a (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - リリさん» リリさん、ご指摘ありがとうございます…!こちらの設定ミスです…修正いたしましたので、名前が変換されるはずです! 応援ありがとうございます!頑張ります!!! (2019年10月11日 21時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - 最高です!登場人物の、名前を変える設定で名前を入れても、変えれないのですが……どういうことでしょうか……これからも、頑張ってください! (2019年10月11日 15時) (レス) id: 3c3ec4405a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫苑 | 作成日時:2019年10月7日 13時