stage.20-1 ページ28
(side.You)
「A、緊張してるか?」
『金城さん…いえ、二度目なのでそこまででは』
「そうか、それなら良いんだ」
ついにやって来た大会の日。さっき金城さんにはああ言ったけど、正直結構緊張している。
大会独特のピリピリとした空気がカジノ全体を包んでいる、ように思える。初めてここに来た時はそんな空気の違いすら感じられなかったけど。
(今日で8年か…)
18歳になった頃に初めてカジノにやって来て、気がついたらオーナーになる権利を得てしまった。
逃げる事も出来ず、必死に仕事を覚えて働いた最初の1年。それ以降は穏やかに、だが確実に出来る仕事を増やしていき…気がつけばこんな年数が経っていた。
(もし今日勝てば、もう4年。もし負ければ引退か…)
最初は譲りたくて仕方無かったオーナー権だが、今はほんの少しだけ手放し難くなっている。何だかんだでこのカジノに愛着が湧いてしまったのだ。
「Aー?入るよー?」
『はーい、どうぞ』
考え込んでいた私を現実に引き戻してくれたのは、8年前に私をこのカジノに連れてきてくれた親友。
「うわぁ…その衣装ヤバいね…エッロ……」
『言い方がおっさん臭いんだけど』
「おっと、思わず心の声が」
『ふふ、でもありがとね、今日は来てくれて』
「いえいえ!大事な親友の為ならこれ位なんて事ないさ!」
4年前の事件を踏まえ、今日は友人が私の側にずっとついてくれる事になっている。彼女は護身術も習得しているので、私は安心してくっ付いていればいい…らしい。
実は大会の直前になって、何処から情報が漏れたのか知らないけれど、うらた君と坂田君が4年前の事件の事を知ってしまったようで、「オーナーの世話係を四天王で交代でやりましょうか?」と提案を受けたらしいが、そちらは丁重にお断りさせて頂いた。
『あ、そうだ。このドレスのジッパー上げてもらっていい?』
「あいよー。にしても真っ黒なマーメイドか………スタイル良いから映えるなぁ………ねぇスリッドに手ぇ突っ込んでいい?」
『や め て』
「うぃっす」
親友との会話は頭を使わないからか、ポンポンと言葉が飛び交う。その気楽さが今はとても有り難かった。
「ん、出来たよ」
『ありがとう』
「どういたしまして」
鏡の前で一度自分の姿を確認する。後は仕上げにリップを塗れば、「オーナー」の完成だ。まだ開会式まで時間があるので、ソファーでゆっくりしようかと思った時だった。
「ねぇ、A」
『なに?』
「…ごめんね」
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紫苑(プロフ) - リリさん» ちゃんと変換できたみたいで良かったです! ご不便をおかけして、失礼しましたm(__)m 頑張ります!ありがとうございます! (2019年10月14日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - ちゃんと、名前が出来ていました!名前で呼ばれるのが嬉しいです( ̄∇ ̄*)ゞ次も頑張ってください! (2019年10月13日 18時) (レス) id: 3c3ec4405a (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - リリさん» リリさん、ご指摘ありがとうございます…!こちらの設定ミスです…修正いたしましたので、名前が変換されるはずです! 応援ありがとうございます!頑張ります!!! (2019年10月11日 21時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - 最高です!登場人物の、名前を変える設定で名前を入れても、変えれないのですが……どういうことでしょうか……これからも、頑張ってください! (2019年10月11日 15時) (レス) id: 3c3ec4405a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫苑 | 作成日時:2019年10月7日 13時