【歌い手】カジノ SHUFFLE【浦島坂田船】

stage.14 ページ20

(side.Shima)

バックヤードに下がっていくラヴィを見送りながら、俺は金城さんに尋ねてみる。

『さっきの…って俺たちが捕まえた奴らか？』
「ああ、それぞれがトラブル常習犯だったんだが、お互いの事を知らなかったようだな」
「最近悪い奴、増えてまへん？」
「増えてはいない。警戒を強めて、ブラックリスト候補だった人間をブラックリストに昇格してやってるだけだ」
「それ、嬉しくないけどね…」
「悪い事してるんだから仕方無いだろ」

何故警戒を強めているのか、その理由は一つしか思いつかない。俺とセンラがまだ「ただの用心棒」だった時、金城さんに忠告された事がある。

『今年もオーナーの命を狙う奴が現れるのか？』
「わからん。ただ、警戒して損はないだろう」
「…オーナーさんの命を、狙う？」
「そんな事があるのか？」

坂田の声がいつもより一段低くなり、纏う空気が変わった。いや、坂田だけではない。うらたも静かに殺気立っているのを感じる。

「お前ら、オーナーの事を心配してくれるのは有難いが、その殺気は仕舞ってくれ。他の客がビビってる」
「すみません」
「はーい」
『お前ら、本当にオーナーが好きだよな』
「そういうまーしぃーもな」
『うるせぇ』
「…はぁ。皆様、お口直しに一杯どうです？」
「頂きます」
「はい」
「もらいます〜」
『もらう』

敬語に戻った金城さんに「お口直し」と言われ、俺たちは次の話題に移る。ここで言う金城さんの「お口直し」とは「この話題はここまで」と同義だ。
もしここで逆らいでもしたら、即刻出禁になる。引き際を間違えてはいけないのは、此処で生き抜く為には必要な常識だ。

「そういえば、うらたんの妹はん、元気？」
「お陰様でな。手術も一段落したし、今は病状も落ち着いてるらしい」
「俺の母さんからも手紙来てた！近い内にうらたんと二人で帰って来たら？って言われたよ」
「大会終わったら顔出すか…」

うらたも坂田も、俺とは違ってちゃんと家族がいる。
羨ましくないと言ったら嘘にはなるが、羨ましく感じるのはこの二人の家族がお互いを想い合っている家族だからだ。

「ねえねえ、二人は大会が終わったら何がしたい？」
『ギャンブル』
「まーしぃーは相変わらずやなぁ。センラさんは特にやりたい事無いなぁ」

そして俺たちの事情を知っているこいつらは、さりげなく話題を変えて俺たちに振ってくる。
下心の無いさりげない優しさが、こいつらと居て楽しいと思える所なのだと改めて感じるのだった。

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