stage.8 ページ13
(side.Urata)
「だぁー!負けた!」
『っし!じゃあ貰うぜ』
「はーい…」
「ふふ、お二人とも白熱した試合でした。お飲み物は交換いたしますか?」
「あ、お願いします!」
『じゃあ俺も』
「畏まりました」
4回戦の勝負を終え、俺と坂田は一息つく。ラヴィさんは近くにいたボーイを呼び止め、俺たちの飲み物を頼んでくれていたようだ。
そんな時、人混みの向こうから一際大きい声が聞こえてきた。
「おいテメェ!今イカサマしただろ?!」
「はあ?イカサマなんてしてねーよ!」
「嘘つけ、さっきディーラーが目を離した隙にトランプに触ってただろ!」
「んなもん、イカサマの証拠にならねーだろ!」
どうやら客同士のトラブルのようだ。この店で表立ってトラブルを起こすと、場合によっては全財産を没収されるのだが、あの客たちはそんな事も知らないのか、それすら忘れる位の酷いトラブルなのか。
「…あ、志麻君とセンラさんだ」
『あの二人が来たなら問題無いな』
人混みの向こうに目立つ紫色の髪と金髪の二人組が見える。
用心棒であり「四天王」の一角でもある二人がいれば、場は収まるだろう。そう思い、ふと視線をラヴィさんに戻すと、彼女は見た事も無いような冷たい視線で、騒ぎが起きている方角を見ていた。
『ラヴィさん…?』
「っ!はい、何でございましょう?」
俺が声を掛けると、彼女は肩を揺らした後、いつも通りの柔らかい表情に戻った。まるで先程の冷たい空気は幻だったかのような変わり身に少し驚く。
『あの人たち、知っているんですか?』
「いえ…ですが、皆様が楽しい時間を過ごしている中で、あのような不快な騒ぎを起こす不届き者に少々怒りを感じておりました」
「うわぁ、久しぶりのブラックラヴィさん見た…」
底冷えするような微笑を見た坂田がふざけて両腕を擦るふりをする。
そういえば彼女が教育係だった頃、俺たちがああいうトラブルに巻き込まれた時、彼女はいつも先陣に立って俺たちを守ってくれた。
あの時はラヴィさんの背中に庇ってもらったり、恐怖でそれどころでは無かったが、きっとあの時もこんな雰囲気だったのかもしれない。朧気に残っている記憶で、彼女の声のトーンは確かにいつもより低かったように思える。
「あ、連れて行かれた」
『あそこのボーイ、大丈夫かな?』
「少々席を外しますね」
『行ってらっしゃい』
相変わらず面倒見の良いラヴィさんに感心しながら、俺たちはようやく届いた飲み物を片手に時間を潰すのだった。
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紫苑(プロフ) - リリさん» ちゃんと変換できたみたいで良かったです! ご不便をおかけして、失礼しましたm(__)m 頑張ります!ありがとうございます! (2019年10月14日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - ちゃんと、名前が出来ていました!名前で呼ばれるのが嬉しいです( ̄∇ ̄*)ゞ次も頑張ってください! (2019年10月13日 18時) (レス) id: 3c3ec4405a (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - リリさん» リリさん、ご指摘ありがとうございます…!こちらの設定ミスです…修正いたしましたので、名前が変換されるはずです! 応援ありがとうございます!頑張ります!!! (2019年10月11日 21時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - 最高です!登場人物の、名前を変える設定で名前を入れても、変えれないのですが……どういうことでしょうか……これからも、頑張ってください! (2019年10月11日 15時) (レス) id: 3c3ec4405a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫苑 | 作成日時:2019年10月7日 13時