千秋楽 ページ9
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「…………」
「わあ、すっげ」
亜久津が荒れた生活をしており、喧嘩慣れしていることは、それなりに周知の事実ではあったが――この分だと、Aもまた人のことを言えないレベルであるのではないだろうか。亜久津対Aの仁義なきバトルを見ながら千石はぼやく。
体格的には亜久津に軍配が上がる。身長も彼の方が高い。パワーに関しても、彼が負けることはないだろう。しかしAは、並外れた身体能力を有している。パワーvsテクニック……いやまあ、ただの枕投げの話であるのだけれど。
「…………」
仁王は黙ったままAを見遣る。掴んだ枕で、亜久津をばこばこ殴りばこばこ殴られている。怪我にはならないだろうが、枕“投げ”じゃなかったのかと言いたい。実に楽しそうに笑う彼は、普段通りの読めない悪ガキだ。
――でも、さっきの、あの笑みは。あのすべてを喰らうような、恐怖を植え付けるような、残酷で残忍な、あの。
例えば、彼らの誇る立海レギュラー唯一の二年生、切原赤也は、試合中気が高ぶると目が充血し『悪魔化』する。あれはまったく別の人格が表れているというわけではなく、彼本来の好戦的で攻撃的な面が、箍が外れて出てきているのだ――というのが、分析担当の柳を中心とした彼らの見解だ。……だとするならば。
あのAも、彼の奥底に眠っていたものが表層に浮き出てきた、そういうことに、なるのだろうか。
不意に感じたうすら寒いものを直視しないように、真田が怒鳴り込んで枕投げ大会が終息するまでの間、仁王はAの姿をただ見つめ続けていた。
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角砂糖(プロフ) - 美琴さん» ありがとうございます!!(大声) (2020年3月11日 19時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
美琴 - 好きです(突然の告白) (2020年3月9日 20時) (レス) id: 0419c563a9 (このIDを非表示/違反報告)
角砂糖(プロフ) - 蘇芳さん» この作品を愛していただき本当にありがとうございます。この話の続編は、今の所はあまり考えていません。今非常に私生活が忙しく、それが一段落したら何か書きたいなとは思っていますので、いつになるかわかりませんが、もし気が向けばお付き合いいただけると幸いです。 (2020年1月30日 4時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
蘇芳(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいました!もしもあるのなら続編楽しみにしています。これからも頑張ってください! (2020年1月24日 20時) (レス) id: ec6c109e68 (このIDを非表示/違反報告)
ピット☆(プロフ) - 角砂糖さん» そうです!覚えていてもらえて嬉しいです!!予定があるかはわかりませんが次の作品をお待ちしてます! (2019年11月20日 1時) (レス) id: f631e9f6d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:角砂糖 | 作成日時:2019年3月18日 21時