王様と番犬 八戦目 ページ28
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そのタイミングに、Aが反応できなかったわけはない――しかし、彼は動かなかった、ボールに飛びついてこなかった。否、こられなかったのだ。
なにせ、幸村からの無言の指示がなかったのだから。
菊丸の放ったそのボールは、完璧だった。それは菊丸の技量もさることながらではあるが、ほとんどまぐれに近い、そんなレベルで完璧だった。完璧で、絶好であった――幸村にとって。
それはちょうど幸村の利き手真正面、幸村が打ち返すには絶好のポイントへの返球だったのだ。だから彼は打った。Aへの命令をせずに、自分の手で打った。
だってテニスプレイヤーだ、格好のボールを喰わないわけがない。
無意識の反応、テニスプレイヤーとして染み付いた、反射条件。
外野組はその意図に気付いたようでざわめき始めている。幸村も、苛立たし気に表情を歪める。
「あのふたりの同調は本来のそれとは違う――繊細なリンクと意思の読み合い、それらを支える絶対の才能が必要なんだ……。だからそこを、突き崩す」
一度ほころびが見えれば、再び結び直すことはほぼ不可能に近い。本来とは違う異質な同調は、同時に不安定でもある。
もちろんこれは、幸村やAの技量不足ではない――むしろこの同調を成立させるだけの圧倒的な才能がそこにはある。神の子とオオカミ、王様と番犬。
しかし、幸村はと言えば、薄く脆くなってしまった同調に、苦々しい表情を浮かべる。これは安易に意識を逸らした自分の落ち度だ。悲観するつもりはないが、しかし反省はする。司令塔として、主人として狂犬のリードを引くのならば、もっとそれに徹するべきだったのだ。
この天才の怖いところは、未だ成長の余地を十二分に残していることであった。
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形勢逆転、不利になったのは幸村とAのペアだ。試合は進み――黄金ペアのマッチポイント。
Aは、真っ暗闇、前後不覚の無の中で、肌で感じる――否、肌ですら“感じられない”感覚に身を任せながら、思考する。なにも理屈ではない勘任せのプレイとはいえ、思考は止めない。冷静さを欠かないためだ。“衝動”と“勘”は違う。常に計算高く。頭はフル回転だ。
だから彼は、現状を正しく把握している。
――司令塔、幸村の負担、ね……。今後武器にしようとするんなら、この課題はクリアしないとだな。
そんな風に、冷静に分析をしている。
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角砂糖(プロフ) - 美琴さん» ありがとうございます！！（大声） (2020年3月11日 19時) (
レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
美琴 - 好きです(突然の告白) (2020年3月9日 20時) (レス) id: 0419c563a9 (このIDを非表示/違反報告)
角砂糖(プロフ) - 蘇芳さん» この作品を愛していただき本当にありがとうございます。この話の続編は、今の所はあまり考えていません。今非常に私生活が忙しく、それが一段落したら何か書きたいなとは思っていますので、いつになるかわかりませんが、もし気が向けばお付き合いいただけると幸いです。 (2020年1月30日 4時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
蘇芳(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいました！もしもあるのなら続編楽しみにしています。これからも頑張ってください！ (2020年1月24日 20時) (レス) id: ec6c109e68 (このIDを非表示/違反報告)
ピット☆(プロフ) - 角砂糖さん» そうです！覚えていてもらえて嬉しいです！！予定があるかはわかりませんが次の作品をお待ちしてます！ (2019年11月20日 1時) (レス) id: f631e9f6d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：角砂糖 | 作成日時：2019年3月18日 21時
