王様と番犬 三戦目 ページ23
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「……とはいえ、このままだとちと厳しいか?」
インターバルにて。スポーツドリンクを喉に流し込みながら、Aはんむ、と難しい顔をしている。戦況は膠着状態、一進一退を繰り返しているのが現状だ。
「
さすがは全国大会を制した青学が誇る黄金ペア。そう簡単には突き崩れてくれないらしい。
「どうするよご主人サマ」
「……そうだね」
同じように水分を摂っていた幸村は、神妙そうな顔をしながら、しかしどこか面白そうに言う。
「そもそもお前、好きにやれって言ってやったのに、思ったよりも大人しいから」
「オイ俺のせいってのかよ!」
「そんなことは言ってないだろ」
にやにやと吊り上がった目元口元が、何よりも雄弁にその言葉を否定している。
「……仕方ねェだろうが。好き勝手暴れて、お前に怪我でもさせたらどうする」
「は」
苦々しそうな顰めっ面で、目線をどこか遠くにやり、嫌悪さえにじませる低い声で、Aは言う。
「お前、仮にも病み上がりだろうが」
本当に嫌々と紡がれた言葉に、一瞬きょとんと呆けた幸村は、
「ええ、気持ち悪」
と、なんとなしに言い放った。
「おっ前なァ!」
「だって、あは、お前が俺に気なんか使ってるって言うのかい? お前が、俺に? あはは、に、似合わな」
「ああもううるせェうるせェ!」
スコンッと飲み干したボトルを投げ置いて背を向けるA。くすくすと幸村は笑う。ああ、何というか、その心遣いは、思ったよりも悪くない。
「まあ待ちなよA」
「あ゛?」
「お前がなかなかに俺のことが好きだってのはわかったよ。その馬鹿みたいなおせっかいは置いておいて」
「ばっ……オイコラ!」
「置いておいて」
ぴしゃん、とにべもなく言いのけて、幸村はにやりと笑った。
「要するに、俺がお前に合わせるんじゃなく、お前が俺に合わせればいいんだろ」
「……いつも通りじゃねェか」
「そうかもね」
でも違う。同じことをやっていたら進化は生まれないし、進化が生まれなければ勝利もない。
だから、と幸村は言った。
「俺たちもやろうか、
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角砂糖(プロフ) - 美琴さん» ありがとうございます!!(大声) (2020年3月11日 19時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
美琴 - 好きです(突然の告白) (2020年3月9日 20時) (レス) id: 0419c563a9 (このIDを非表示/違反報告)
角砂糖(プロフ) - 蘇芳さん» この作品を愛していただき本当にありがとうございます。この話の続編は、今の所はあまり考えていません。今非常に私生活が忙しく、それが一段落したら何か書きたいなとは思っていますので、いつになるかわかりませんが、もし気が向けばお付き合いいただけると幸いです。 (2020年1月30日 4時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
蘇芳(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいました!もしもあるのなら続編楽しみにしています。これからも頑張ってください! (2020年1月24日 20時) (レス) id: ec6c109e68 (このIDを非表示/違反報告)
ピット☆(プロフ) - 角砂糖さん» そうです!覚えていてもらえて嬉しいです!!予定があるかはわかりませんが次の作品をお待ちしてます! (2019年11月20日 1時) (レス) id: f631e9f6d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:角砂糖 | 作成日時:2019年3月18日 21時