検索窓
今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:44,118 hit

王様と番犬 三戦目 ページ23

.


「……とはいえ、このままだとちと厳しいか?」

 インターバルにて。スポーツドリンクを喉に流し込みながら、Aはんむ、と難しい顔をしている。戦況は膠着状態、一進一退を繰り返しているのが現状だ。

同調(シンクロ)、ね……」

 さすがは全国大会を制した青学が誇る黄金ペア。そう簡単には突き崩れてくれないらしい。

「どうするよご主人サマ」
「……そうだね」

 同じように水分を摂っていた幸村は、神妙そうな顔をしながら、しかしどこか面白そうに言う。

「そもそもお前、好きにやれって言ってやったのに、思ったよりも大人しいから」
「オイ俺のせいってのかよ!」
「そんなことは言ってないだろ」

 にやにやと吊り上がった目元口元が、何よりも雄弁にその言葉を否定している。

「……仕方ねェだろうが。好き勝手暴れて、お前に怪我でもさせたらどうする」
「は」

 苦々しそうな顰めっ面で、目線をどこか遠くにやり、嫌悪さえにじませる低い声で、Aは言う。

「お前、仮にも病み上がりだろうが」

 本当に嫌々と紡がれた言葉に、一瞬きょとんと呆けた幸村は、

「ええ、気持ち悪」

 と、なんとなしに言い放った。

「おっ前なァ!」
「だって、あは、お前が俺に気なんか使ってるって言うのかい? お前が、俺に? あはは、に、似合わな」
「ああもううるせェうるせェ!」

 スコンッと飲み干したボトルを投げ置いて背を向けるA。くすくすと幸村は笑う。ああ、何というか、その心遣いは、思ったよりも悪くない。

「まあ待ちなよA」
「あ゛?」
「お前がなかなかに俺のことが好きだってのはわかったよ。その馬鹿みたいなおせっかいは置いておいて」
「ばっ……オイコラ!」
「置いておいて」

 ぴしゃん、とにべもなく言いのけて、幸村はにやりと笑った。

「要するに、俺がお前に合わせるんじゃなく、お前が俺に合わせればいいんだろ」
「……いつも通りじゃねェか」
「そうかもね」

 でも違う。同じことをやっていたら進化は生まれないし、進化が生まれなければ勝利もない。
 だから、と幸村は言った。

「俺たちもやろうか、同調(シンクロ)


.

王様と番犬 四戦目→←王様と番犬 二戦目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (81 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
171人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

角砂糖(プロフ) - 美琴さん» ありがとうございます!!(大声) (2020年3月11日 19時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
美琴 - 好きです(突然の告白) (2020年3月9日 20時) (レス) id: 0419c563a9 (このIDを非表示/違反報告)
角砂糖(プロフ) - 蘇芳さん» この作品を愛していただき本当にありがとうございます。この話の続編は、今の所はあまり考えていません。今非常に私生活が忙しく、それが一段落したら何か書きたいなとは思っていますので、いつになるかわかりませんが、もし気が向けばお付き合いいただけると幸いです。 (2020年1月30日 4時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
蘇芳(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいました!もしもあるのなら続編楽しみにしています。これからも頑張ってください! (2020年1月24日 20時) (レス) id: ec6c109e68 (このIDを非表示/違反報告)
ピット☆(プロフ) - 角砂糖さん» そうです!覚えていてもらえて嬉しいです!!予定があるかはわかりませんが次の作品をお待ちしてます! (2019年11月20日 1時) (レス) id: f631e9f6d4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:角砂糖 | 作成日時:2019年3月18日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。